〈インタビュー〉映画監督 加藤直輝 氏 映画「2045 Carnival Folklore」シアトル国際映画祭で上映

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映像と音響の「体験」で国境を超えたい

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加藤直輝監督

米国最大の映画祭の一つ、シアトル国際映画祭(SIFF)に「2045 Carnival Folklore」が出品される。同作品は「アブラクサスの祭」で知られる加藤直輝監督の最新SF映画。全ての原発がメルトダウン(全炉心溶融)した2045年の日本を舞台に、モノクロ映像とノイズ・ミュージックが独特の世界観を生み出す。今回SIFFでは上映と同時にライブ演奏を行う予定だ。
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新人監督やインディペンデント監督の国際デビューの登竜門ともなっている同映画祭に選ばれたことに、監督・脚本・プロデューサーの加藤氏は「光栄です」と率直に感想を述べる。

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「2045 Carnival Folklore」の一場面から(©2045 Carnival Folklore)

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(©2045 Carnival Folklore)

同氏が作品の制作に至った経緯は「アブラクサスの祭」の公開中にさかのぼる。10年に福島で撮影し、同年末から11年にかけて日本各地で公開されたその最中に、東日本大震災が起きた。人ごとではないと感じ、1カ月たったころ、撮影時に関わった人々の見舞いに訪れた。当時はまだ警戒区域が規制されていなかったため原発の近くにたどり着く。地震直後のまま放置され、居住者のいない異様な光景を目の当たりにしてショックを受け、何か作品にできないかと考えた。しかし目に見えない放射能は感知できずカメラを回しても映すことができない。映画としてどう向き合っていくべきかを悩んだ。結果、目の前の状況に戸惑う自分の気持ちも含めて、考えをストレートに出そうと思った。その1年後、「2045 Carnival Folklore」の制作を始めた。
低予算で踏み切り、ギャラがなくても共に活動しようという仲間と作り上げた作品は、前例のないノイズ・ミュージックを題材に、SFというジャンルでモノクロ映像を駆使した1本にまとめ上げられた。音楽やセリフ、効果音を完成させずに当日劇場でライブ演奏での音楽をつける。ストーリーを追うというよりも映像や音響を「体験」する要素が強いため、国境を超えて日本国内外の人々にも何かを伝えることができるのではないかと同氏は期待している。
欧米で別名「ジャパノイズ」とも呼ばれ、新しいジャンルとして広がりを見せているノイズ・ミュージックを今後も作品に反映させたいと考えている。また同映画祭をきっかけに、ローカルからグローバルなものへストーリーやテーマを構想していきたいと語った。
SIFFでは同作品は6月5日と6日に上演される(日本からは5作品が出品)。
SIFF公式サイト】www.siff.net/festival-2015/2045-carnival-folklore
facebook】www.facebook.com/2045carnivalfolklore
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加藤直輝監督〈プロフィル〉 かとう なおき=写真= 1980年、東京生まれ。立教大学文学部フランス文学科を卒業した後、東京藝術大学大学院映像研究科に進学。修了作品「A Bao A Qu」が第12回釜山国際映画祭に出品される。「アブラクサスの祭」(原作:玄侑宗久、主演:スネオヘアー、音楽:大友良英)で劇場デビュー、サンダンス映画祭やニューヨーク国際映画祭など各国の映画祭で上映される。2011年年ノイズデスマッチユニット Sierror ! 〽を増田圭祐と結成。最新作「2045 Carnival Folklore」が6月5日、6日に第41回シアトル国際映画祭で上映される。

(「WEEKLY Biz」(ニューヨーク)2015年5月23日号掲載)

加藤直輝監督

「2045 Carnival Folklore」の一場面から(©2045 Carnival Folklore)
(©2045 Carnival Folklore)

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