〈ピープル〉「映画撮影の本場、ハリウッドへ」

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文化庁新進芸術家海外研修制度フェローで来春、米国へ

映画撮影監督 定者如文さん

定者如文

定者如文さん

 

芸術家の間ではよく知られた国費による芸術家派遣制度が日本にある。文化庁の「新進芸術家海外研修制度」だ。この制度を利用して自らの才能を伸ばそうと海外に飛び出し学んだ芸術家たちが、今でも世界中の美術、音楽、ダンス、陶芸、ステージパフォーマンス・映画などの世界で活躍している。2017年3月、また新たな才能がこの制度を利用して米国へやってくる。映画専門のカメラマン「映画撮影監督」の定者如文(じょうしゃ・ゆきぶみ)さんだ。

小学校2年生の時から既に映画に憧れていたと話す定者さん。研修先にはロサンゼルスとニューヨークを選んだ。米国映画で刺激を受けたカメラマンは「フォックスキャッチャー」の撮影監督のグレッグ・フレイザーや、故ジャン=イヴ・エスコフィエやエマニュエル・ルベッキと言った他国からやって来て米国でチャレンジをし続けているカメラマンたち。「ずっとハリウッドの仕事をしたいと思っていたので、それに近づけることがうれしい」

「思えば叶う」という言葉に支えられてきた。定者さんの大学院の恩師でもある撮影監督、栗田豊通(とよみち)さんの言葉だ。

26歳で大学に入り、映像業界には32歳で入った。38歳で英語を覚え、41歳の今年、同制度の派遣生に選ばれた。「全てが遅れてスタートしているけれど、これで僕が成功すれば、日本の若い方々の励みになりますよね。この年齡でできるのだから、若ければもっとできる。そういう方々のためにも、僕は成功しなければと思っている。日本人にしかない視点を強みにしていきたい」と熱く語った。

◇ ◇ ◇

文化庁新進芸術家海外研修制度は、海外で学びたい芸術家を支援する国費の奨学金制度。長期研修は毎年夏季が応募締め切りとなっており、今年(来年以降派遣分)の締め切りは8月5日(金)。
文化庁「新進芸術家海外研修制度」
参考記事「映画人のための文化庁海外研修制度、締切迫る」

 

定者如文

 

●定者さん略歴●

定者 如文(じょうしゃ・ゆきぶみ)さん
職業:Cinematographer
1975年生まれ。兵庫県神戸市出身。
大阪芸術大学映像学科、東京藝術大学映像研究科修了。
大阪芸術大学在学時は山下敦弘監督作品に従事し、藝大大学院修了後は撮影部としてキャリアをスタート。三池崇史作品や北野武作品を経験後、自主映画ながら撮影を担当した『kingyo』(エドモンド・楊監督作品)がベネチア映画祭短編部門にノミネートされる。また、担当した『The Time Walker』(月川翔監督作品)がウォン・カーウァイ、ソフィア・コッポラが審査員を務める映画祭「ルイ・ヴィトン ジャーニーズ・アワーズ」において、グランプリを取る。その後ミュージックビデオやCMを撮りつつ『きっかけはYOU』『Chearflly』『携帯彼女・彼氏+』などの長編映画も撮影。2014年には中国に渡り中国土豆制作ドラマ『午夜计程车(第一季)』を撮影、その年の中国国家新聞出版広電総局の選ぶベストネットドラマ賞を受賞。15年撮影を担当した『2045 Carnival Folklore』(加藤直輝監督作品)がシアトル国際映画祭に招待される。同作は今秋欧州ツアーとしてヴロツワフ、ロッテルダム、バルセロナ、ロンドンなどを周りライブ上映を行う予定。

(取材協力:株式会社ENパシフィックサービス)

 

kingyo

(2016年8月13日号掲載)

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