指輪自体から語りかけられる〝声〟を感じ、アートに
指輪をモチーフにオブジェ作り
突如マンハッタンの公園に現れる巨大なリンゴの指輪「Ringo」、指輪が常識を超えた姿で語り出す「A Tale of Rings」など、アートの街ニューヨークで“指輪(ring)”をモチーフに、オブジェを生み出すアーティストがいる。彫刻家(Sculptor)の久保田玲奈さん、その人だ。
今から9年前、愛知県立芸術大学で彫刻を専攻し、卒業後、自らの作品を世の中にどう広めていくかを学びたい、とニューヨークに移り住んだ。語学学校に通うことから始め、老舗アートスクール、アート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークにも通った。美大時代の恩師が遺したブルックリン・パークスロープ地区にあるスタジオを若手アーティストとともにシェアすることによって、渡航直後の早い時期から制作活動を始めることができた。アートフェステバルやコンペに定期的に参加し、個展やオープンスタジオ(※次回10月開催)も積極的に開催した。フェスティバルに出展すると、批評よりも「これいいね!」と盛り上げてくれる雰囲気に、この街の自由さを感じるという。「現場に出ることでいろいろな反応を見ることができます」と話す。
指輪をモチーフにしたオブジェ作りを始めたのは、母から指輪を譲り受けたことをきっかけに、人が着ける指輪に「捕らわれるような感覚」を持ったからだという。直径約30センチもある大きなリングをモチーフにした作品は、身に着けるための指輪のデザインではなく、指輪自体から語りかけられる“声”を感じ、アートとして表現している。
アーティストとして活動する一方で、マンハッタンのダイヤモンド街にある宝石業者でデザインやリペアなども行い、商業的にも指輪に携わっている。そこでの仕事は新しい観点からの刺激を受け、作品作りにも生かされているのだとか。
久保田さんにとってニューヨークは「飽きない、ネタが尽きない、機会がある」場所。今後もここでの制作活動を続けていきたいと話す。
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アーティストが自らの制作スタジオで新作を発表する“オープンスタジオ”という形の展示が、ブルックリンのGowanus(www.artsgowanus.org)地区で、10月21日と22日の2日間、正午から午後6時まで開催される。久保田さんのスタジオでも行われる。詳細は(reinuts.07@gmail.com)まで。
(2017年8月26日号掲載)