ブランドから飛び出し、自分自身の価値で勝負したい
ニューヨークへやってくるアーティストは皆、人生を掛けた一大決心を胸に秘めて集まってくる。ここにまた、日本での安定した活躍の場をあえて飛び出し、ニューヨークに挑戦しようとする強者がいる。ヘアスタイリストの井原昌二さんだ。
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数多くの美容師がしのぎを削る東京で10年間活動してきた井原さん。日本の芸能界でタレント、モデル、ファンションモデルらのスタイルを担当し、有名ファッション誌「CanCam」、「JJ」、「MORE」、「ar」などのヘア特集にも井原さんのスタイルが紹介されるなど一線で活躍。化粧品メーカーの商品開発に関わり、カラー剤メーカーのヘアショーでヘアメークを担当した。
日本有数のサロンなどで働くなかで、そのブランドに守られていることを日々感じていた。ブランドにぶら下がるのではなく「自分個人の価値を評価していただき、仕事をいただけるようになりたい」と思い、あえて「言葉も通じない、日本でのキャリアも通用しない」ニューヨークでゼロから挑戦することを決意した。
ニューヨークと日本の美容業界は「スケールが違う」と井原さん。ニューヨークには世界中からスタイリストが集まり、日々スキルアップを目指して腕を磨いているだけでなく、カット料金は「少なくとも200ドルは欲しい」というスタイリストが多いことにもショックを受けた。「日本では2万円のカットを受け入れてくれる土壌は無いが、ニューヨークでは自分のカットの価値は200ドル、と言うことができ、その価値が認められれば本当にそれでビジネスが成り立つ」
自分がしっかり向上していけば、それに伴った評価や報酬が付いてくるという考えが井原さんの心に火をつけた。
「美容師は、高い技術と共に、“人対人”の心配りが要求される職業。日本人特有の気遣いも付加価値として評価いただき、ニューヨークで活躍していけたら」と笑顔を見せた。
〈プロフィル〉井原昌二(いはら・しょうじ) 1983年生まれ。福岡県出身。大村美容専門学校卒業。GARDEN美容院で長くヘアスタイリストとして活躍。