【インタビュー】アーサー・ホーランド牧師「もっとグローバルな、世の中に貢献できる人間として育つ環境の中にいる」

0

在米日本人へメッセージ ポジティブな思いを持って

“不良牧師”の異名を取るアーサー・ホーランド氏は、革ジャンを羽織りバイクにまたがる型破りな牧師だ。アーサー牧師が日本で知られるようになったのは1992年に始まった「十字架行進」。「人が教会に来ないなら、十字架をもぎ取って歩こう」と、高さ3メートルの十字架に車輪をつけて担ぎ、沖縄から北海道までを歩き抜いた。行進は今や米国や韓国、台湾と世界に広がっている。

幼少期から二つの宗教とアイデンティティー

米国人の父と日本人の母を持つアーサー牧師には小さい頃から、東洋と西洋の二つの宗教とアイデンティティーが体に流れていた。幼少期を仏教徒である祖父母の下で育ちながら、カトリック系の学校に通う中、幼い心に刻まれたのは、宗教は何であれ「見えない存在」に祈る祖母の姿だったという。

アメリカ大陸横断。サンタモニカの海岸からニューヨーク・ロングビーチの海岸までの4800キロの旅の最終地で

米国から日本へ

アーサー少年は15歳で柔道を学び、五輪の米国代表選手になることを目指し20歳で渡米。好成績を出しつつも勝負の世界の厳しさを味わっていた23歳の時、祖母が見ていた「見えない存在」を教会で感じ、洗礼を受ける。その後、けがで選手を引退し、31歳で宣教活動をするため日本へ帰国する

犬(ジョン・勝手につけた名)が15マイルついてきた!

2年かけ米国横断

2014年には米カリフォルニア州サンタモニカからニューヨーク州ロングビーチまで、約2年かけ、米国横断4800キロを歩み抜いた。この様子は全米各地のテレビ局や新聞社の取材を受け話題となった。

キューバ横断。サンチアゴからハバナ900キロの旅

伝えたいのは「あなたは愛されている」

アーサー牧師は会員制度や献金で人を縛る宗教とは別の立場でいるためにも、教会を持たない。「青空、大海原、大地が礼拝の場となり、鳥のさえずり、虫の音が賛美歌となる」と話す牧師が伝えたいことは、「あなたは愛されている」というシンプルなメッセージだけだ。

そんなアーサー牧師に、米国に住む日本人へのメッセージをもらった。

「(中略)調和を大切にする日本と、個を主張するアメリカ。その葛藤は僕もよく分かる。でも個の自立はやはり大切。日本人の欠けているところを謙虚さを持って受け止めて、個と向き合う時間を持てば、魅力的な世界になるのではないかと思います。人間はうまくいかない時の方が己と向き合い、自分を自由にするスピリットに出合えたりします。だから、そんな時は『今、ますます自分という存在が魅力的になって、もっとグローバルな、世の中に貢献できる人間として育つ環境の中にいるのだ』というポジティブな思いを持てばいいのではと思っています」

〈Profile〉
アーサー・ホーランド
1951年大阪府生まれ。日本在住の米国籍の牧師。日本で高校卒業後、米国へ渡り、格闘技で頭角を表す。全米レスリング選手権チャンピオン(サンボ)2回、パンアメリカン選手権大会銀メダル。全米柔道選手権3位。23歳で洗礼を受け、後に牧師となる。82年に伝道のために日本へ帰国。89年、新宿・歌舞伎町でのユニークな辻説法が話題になる。92年、日本列島縦断十字架行進を決行。現在「アーサーホーランドミニストリー」主宰。モチベーター・講演者として、企業や学校などで講演会をこなす。多数の著書あり。2012年に再び「日本列島十字架行進」を決行。14年、約2年をかけて米国横断。16年に台湾、17年に韓国を再び縦断。

【ウェブ】arthur-hollands.com/

(2020年1月18日号掲載)

アリゾナあたり

日本列島縦断3000キロ。3度目のゴール写真

Share.