安珍と清姫の悲恋描いたチェンバーオペラ「道成寺」、古典とオペラが見事に融合

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音楽と脚本手掛けたリヨ・斎藤氏「感謝の気持ちでいっぱい」

観客からの惜しみない拍手に応える出演陣と総合演出、作詞作曲を手がけたリヨ・斎藤氏(中央)。左から、Gloria Kim(Pianist)、Eileen Mack(Clarinetist)、Lily Arbisser(Suzu = soprano)、Spencer Viator(Anchin = tenor )、Reuben Blundell (Conductor)、Riyo Saito、Rachelle Pike(Kiyohime = mezo)、Adam Flynn Emery(Master/Takako/Boatman = baritone)、Sara Bollander Oda(dancer)、Kevin Suzuki(skeleton/Choreographer)

 

5月14日(火)、カーネギーホールのワイル・リサイタル・ホールで、リヨ・斎藤氏の音楽・脚本によるチェンバーオペラ「道成寺」が上演された。
1000年以上前から存在した修行僧・安珍と真砂庄司の娘清姫の悲恋を描いたストーリー「道成寺」にコメディーの要素を組み合わせ、英語脚本と楽曲を斎藤氏が全てオリジナルで書き上げた。

台本構成、音楽性、娯楽性まで意識し、オペラを初めて見る人にも楽しめる作品として、英語でのあらすじ・プログラム・台本も用意された上での趣向を凝らした公演だった。演奏したのは、ソプラノ、メゾ、テナー、バリトンの4人の歌手、そしてピアニスト・クラリネット奏者の計6人。それらの響きが指揮者によってまとめ上げられていた。

清姫・大胆不敵な素晴らしい歌声

レイチェル・パイクは、アリア、「5日過ぎたのに」で、マジックミラーを片手に艶麗な清姫を演じた。後場のアリア、「安珍、どうして私から逃げたの?」では悽愴(せいそう)なクライマックスを歌い上げた。この2曲を着物でなく洋服で演じたレイチェルは、メゾ・ソプラノの低音から高音の音域を十分に出し切り、大胆不敵な素晴らしい声をワイル・リサイタル・ホールに響かせた。

安珍・甘美でロマンチックな美声

安珍役のスペンサー・ビエターが持つ甘美でロマンチックな音質は、安珍にぴったりだった。最後のソロ、「私も死ぬのか?」では実に哀愁を帯びた、表現豊かな伸びのある美声を聞かせた。

3役をこなしたバリトン

鈴役のリリー・アービサーは音色が優しく、パワフルさはないもののチャーミングな音質を漂わせる上品な歌手。バリトンのアダム・フリン・エメリーは高子、老僧そしてボート・マンの3役をこなす。音量、高低を変えての3役。若きアダムにとっての初めての大役だが、その奮闘ぶりは舞台を通して伝わってきた。

クラリネット尺八のような音色

ピアニストのグロリア・キムは、終始指揮者とのコラボで奮闘。全体を素晴らしくリードし、まとめ上げた。クラリネット奏者のアイリーン・マックは時に低音であたかも尺八のような音色を出し、またペンタトニックの日本的な音階も聞こえてきた。

公演後、斎藤氏は「指揮者、4人のシンガー、そしてピアノ、クラリネット奏者の2人、以上7人のアメリカ人と踊りに関わった2人の日本人のハーフが日本人である私が作曲した道成寺の初のオペラを、ここまで盛り上げてくれて、感謝の気持ちでいっぱいです」と話した。

終了後は、日本クラブのレセプションに120人近くが集まり、公演の成功を祝った。

 

(2019年6月1日号掲載)

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