
「MoMA Mart」
ニューヨーク近代美術館(MoMA)の公式ショップ「MoMAデザインストア」が1月7日、期間限定のポップアップストア「MoMA Mart」をオープンした。
棚に並ぶのはスナックではなく、一見食べ物に見えるが実はランプ、時計、キャンドル、スツール、彫刻的な装飾品といったオブジェ。MoMA Martは1月7日から3月29日まで、MoMAデザインストアのソーホー店(81Spring Street)とミッドタウン店(44West 53rd Street)の両店舗で展開されるほか、オンラインでもさまざまなアイテムを購入できる。
MoMA Martは市場という概念そのものを遊び心で表現している。トマトやサンドイッチ、ピザのスライスといった日常的な食品の形が、奇妙な洗練さを備えたデザインオブジェへと変貌。特筆すべきはトマト型テーブルランプ、ピザやサンドイッチをモチーフにした時計、野菜や果物のような花瓶、そして明るい専門店で見かけるような商品と見間違えるキャンドルなど。多くの商品はMoMA限定で、すべてがトロンプ・ルイユ(だまし絵)を強く意識したデザインだ。
このポップアップは、特に現代美術において長年にわたり注目されてきた「食物を形態として捉える」という概念に着想を得ている。20世紀初頭の実験からポップアートが大量消費を肯定するまで、芸術家たちは文化や欲望、日常生活を語る手段として繰り返し食物を題材にしてきた。MoMA Martはこの歴史、特にクレス・オルデンバーグやエド・ルシャといった作家たちに敬意を払いつつ、空間を講義の場にはしていない。参照したい人には参照点があるが、ただ見て笑いたいだけの人にも十分に楽しめる体験を提供している。
「MoMA Martは創造性を具現化すると同時に、アート、ユーモア、日常体験の境界を曖昧にする模造食品オブジェを収集してきたMoMAそのものの歴史へとさかのぼる線を引き出しています」と、美術館のマーチャンダイジングディレクター、エマニュエル・プラットさん。
MoMAデザインストアでの購入と同様、売上金は美術館とそのプログラム運営に充てられる。
(2026年1月24日号掲載)