在ニューヨーク・インドネシア領事館後援決定
6月21日(木)から、ニューヨーク、マンハッタンにあるギャラリー「Tenri Cultural Institute」にて開催中の、日本を代表する染色作家・荒井健さんと染織作家・増山紀代さんの海外初となる個展に、在ニューヨーク・インドネシア領事館の後援が決定した。
インドネシアの島々にインスピレーションを求めた作家の、30年以上にわたる現地での創作活動と、インドネシア伝統のテキスタイルを保存、伝承した貢献が認められた形で、今回の後援となった。
半世紀以上にわたって日本でも稀有なテキスタイルアーティストとして活動を続けてきた二人の「集大成」ともいえる今回の個展。初期から最新の作品まで、軌跡が感じられる、ダイナミックな作品群が展示される。
■概要
【会期】6月21日(木)〜7月3日(火)
【ギャラリースケジュール】月〜木:正午〜午後6時、土:正午〜午後3時(金・日:閉館)
【会場】天理インスティテュート(www.tenri.org)
【場所】43A West 13th St, NYC
【作家公式サイト】http://our-road.wixsite.com/our-road
【個展についての質問・問い合わせ】ourroad2018@gmail.com、646-468-5602(Our Road 事務局 佐藤めぐみ)
■メモ
ファストファッションが台頭する今、 我々が身につける布素材が一体どこから来ているのか? 気にとめたことがあっただろうか?
戦後の高度成長期の日本で作家活動をしていた荒井・増山氏両氏は、「効率化」を求める社会への疑問から、「ものづくりの起源」に立ち戻るため、原初的な工芸様式を残す地域への旅を始める。そしてインドネシアで出会ったのが、昔ながらの技法を残した「バティック(ろうけつ染)」と「イカット(絣織)」だった。
現代社会から絶滅しつつあった伝統的技法:例えばイカットは、綿から一本の糸を績み、そして括る。島に自生する藍や茜で染め上げ、木の実をすり潰した粉を使って染め糸を洗う。腰機でかすり模様を織る。さらにこれらの素材は、畑や森で実るのを待たなければならない。また染色の工程でろうを用いて模様を染め出すバティックは、複雑なデザインを全て手作業で染めるため高い集中力が必要なうえ、1日に染められる量もかなり限定的である。
非効率的で原始的な制作過程から生まれるクリエイティビティ、その土地と共に生きる人々の生命力。二人は、「作品を生み出す」ということが、「人は土地(とその受け継いできたもの)とともに生きていくこと」に重なっているのだと気づかされ、やがて作品を通し、土地と共に生きることの価値や安らぎを伝えたいという思いを抱くようになる。さらには、海外アーティストである自身がこの伝統的な技法を使った作品づくりをすることにより、途上地域の経済や
伝統文化の保護に貢献できるのではないかと考えている。
増山さんはこう語る。「今、私たちを受け入れたくさんの事を教えてくれた島々にも、効率化の波は忍び寄っている。それなら、我々のような海外の作家が、あえてその土地の昔からのやり方で製作することで、島で生きる人たちにその良さを見直してもらい、土地に伝わる文化や生活を少しでも守れるのではないだろうか。」
今回の作品展では、そんな願いのこもった彼らの作品が並ぶ。サステイナビリティに注目が集まるニューヨークで、彼らの作品が、どのようにニューヨーカーの心に響くのか、楽しみだ。
◉About the Artists
荒井 健/増山紀代
東京芸術大学在学中に出会う。1967年結婚。荒井は染色、そして増山は染織の造形作家として互いに刺激を与えつつ、現在も創作活動を続けている。荒井は女子美術短期大学のテキスタイルデザイン研究室で教授として長年に渡り後進の指導にあたりつつ(2003 年退職)、空間をダイナミックに使った作品を制作。90 年代からはインドネシアの伝統技法である”ろうけつ染”のバティックアートをバリ島と日本で制作している。
増山はモダンイカット制作などの作家活動と並行して、80 年代からヨーロッパの現代工芸やアールヌーボーの、90 年代からはインドネシア諸島や西アフリカの部族の原初的な染織文化の研究も行っている。2012 年には自身が収集したイカットなどの貴重な染織コレクション220 点あまりを富山市佐藤記念美術館に寄贈。「増山コレクション」として永久収蔵されている。2012年文化勲章叙勲。