芥川賞作家・小山田浩子さん、NYUなどで講演

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「日米文学の違い楽しみ、多くの人に読んでほしい」

講演をする小山田浩子さん(右)=11月22日、ニューヨーク(撮影:中沢)

国際交流基金(The Japan Foundation)は11月21日から23日、芥川賞作家の小山田浩子さんとノースカロライナ大学シャーロット校助教授デイビッド・ボイド博士による講演会をマンハッタンで開催した。22日にはニューヨーク大学で講演会を行い、同書を手に雨天の中、駆け付けた学生や翻訳関係者で会場は埋め尽くされた。この講演会は小山田さんのデビュー作『工場』が自身初となる英訳出版となったことを記念したもので、ボイド博士は同書の翻訳を担当した。

10年に新潮新人賞を受賞した同作は、奇妙な工場の内部を従業員3人それぞれの視点から描かれた作品。小山田さん自身が工場で働いていた経験を基に、工場の閉そく感や日本が抱える労働環境の問題などが映し出されている。

講演では、執筆の経緯や作品に込めた思い、原文と英訳の違いなどについて語り、日本語と英語の朗読も行われ来場者は熱心に耳を傾けた。小山田さんは、「日本文学的な独特な語りなど、そういった(欧米文学との)違いを楽しんで、いろんな方に読んでもらいたい」と語り、質疑応答では、同作における労働環境問題などや出版不況とインターネット交流サイト(SNS)の関係性などについて、英語と日本語でのさまざまな質問が寄せられた。

来場者の一人、ニューヨーク大学院東アジア学専攻の男子学生、デイビッドさんは「本のテーマと日本文化に興味があり参加した。教授を志す身として、この素晴らしい講演会で小山田さんから多くのことを学ぶことができた」と話した。
終了後も多くの来場者が小山田さんらに駆け寄り熱心に話を聞き、ニューヨーカーの日本文学への関心の高さがうかがわれた。

来年には第150回芥川賞受賞作品『穴』が英訳出版予定。

『工場』の英訳版『The Factory』は、10月29日に出版された=11月22日、ニューヨーク(撮影:中沢)

(2019年12月7日号掲載)

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