代理出産の歴史(8)タイの代理母サービスの危険性や医師らの摘発を2013年秋ごろから懸念

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代理出産13

「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第85回

代理出産医療コンサルタントである弊社にいただくお問い合わせ件数でトップ5に入る代理出産について説明しています。弊社のクライアントにも多くの赤ちゃんを授けてくれた“赤ちゃん工場”と言われたインドが2013年から徐々に代理出産の扉を閉じたことにより、多くの斡旋(あっせん)会社や外国人依頼者が、生殖医療に関する法的規制がなかったタイへ地を移したことをお伝えし、タイの代理出産について説明を開始しています。

タイにおける生殖医療のビジネスは、このインドの影響から短期間で急成長、繁栄し、世界中からの依頼者が殺到しましたが、特に代理出産で名を馳せたのが、近代的な美しいクリニックを持ち優秀という評判のドクターピシットでした。英語も堪能で、コミュニケーションも円滑で、妊娠率が高いことが人気の理由でした。扉を閉ざしたインドから次の有効な代理出産場所を審査するために、弊社もコンタクトを取り、電話会議を行いましたが、ピシット医師から、その時点で、タイは代理出産などの生殖医療の正式なガイドラインがないことを再確認し、将来的にどうなるか分からない状況から、弊社のクライアントにとって、タイは選択肢にならないと判断しました。メディアでもピシット医師の美しいクリニックの待合室が診察待ちの代理母であふれている様子を取り上げていましたが、代理出産業界では、華やかな繁栄と多大な利益が注目を集めていることからタイ政府によりピシット医師の摘発が懸念されるという噂が立ち始めました。

インドがメディカルビザ(医療査証)の徹底を開始した時点で、医療査証の申請の要件がそろわない多くの代理母依頼者たちは、新たな行き先としてタイを選択しましたが、タイの代理母に対する規則がグレーであること、そして、リスクが潜在することに無関心だった傾向にあります。しかし、そのリスクは、タイの商業代理母に対するスタンスを理解することに努めると同時に、注意して状況の把握に努めれば、明確な信号が読み取れたはずです。弊社を含む米代理母業界の首脳は、しばしばその信号を“大地震”の前兆と受け止め、タイの代理母サービスの危険性や医師らの摘発について13年秋ごろから話題にしていたのです。

(次回掲載は1月11日号)

(さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子)

さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子【執筆者】清水直子しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。

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