性別選択・男女産み分けの歴史と親たちの夢(1)
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第147回
市場に存在する性別選択の方法論の歴史と生殖医療観点からの信憑性
弊社設立の2003年から20年以上にわたり、我々は日本からの多くの方々の生殖医療をお手伝いしてきた。その中で、性別選択を希望されるケースのうち、特に既婚女性からの相談では、10人中8~9人が「女の子が欲しい」という希望で占められている。一方、近年は晩婚化や未婚率の上昇などを背景に、独身男性が代理出産によって実子を持つことを希望し依頼されるケースが増えているが、この場合は対照的に、10人中8~9人が「男の子が欲しい」と希望する傾向があり、男女間で希望する性別に明確な違いが見られる。
米国のFDAに承認されず米国から消えたMicroSort(マイクロソート)への問い合わせが今なお多い
当シリーズでは、まず性別が決まる生物学的な仕組みを説明したうえで、男女産み分けの歴史と、現在までに行われてきた様々な方法、そして各方法の科学的根拠や信頼性・成功確率について解説する。特に、日本から現在でも多くのお問い合わせをいただくMicroSort(マイクロソート)については、詳しく取り上げていく。MicroSort(マイクロソート)は、X精子とY精子を分離することで性別選択を目指す技術として世界的に知られたが、米国ではFDAの承認を得ることができず、臨床試験下での実施も終了し、2012年に最終的に市場から姿を消した。「比較的簡易に男女産み分けができる方法」として現在でも米国以外では施行されている一方で、精子への処理方法や医学的な課題、安全性についても議論が続いている。その経緯や医療上の懸念についても説明していく。
日本では「妊娠は女性の責任」と考えられてきた歴史
日本では、生殖医療が発達する以前、妊娠や出産に関する科学的知識が十分に普及していなかったこともあり、家制度の影響の中で「子どもが産めない」「男の子を産めない」のは女性の責任という考え方が広く存在していた。しかし生物学的には、妊娠は男性と女性双方によって成り立つものであり、子の性別は父親の精子が持つX染色体またはY染色体によって決定される。女性の卵子はX染色体のみを持ち、子の性別を決める要素は男性側にある。この生物学的事実が、社会全体に十分理解されているとは言い難い。
一方で、科学的根拠が乏しいとされる食事法、タイミング法、お守りや迷信などの「男女産み分け」も、今なお多くの人々に親しまれている。子どもの性別に対する親の願いがそれだけ強いことの表れともいえるが、当シリーズでは、こうした方法も含めて科学的な観点から解説していきたい。
(次回=9月5日号=に続く)

【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。