9.11から25年、WTC跡地で『Come From Away』

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PAC NYCで、一夜限りの特別公演

 9.11同時多発テロから25年を迎えたニューヨークで9月13日、ミュージカル『Come From Away』の特別公演「Come From Away in Concert: Sounds of Remembrance」が、World Trade Center(WTC)にあるPerelman Performing Arts Center(PAC NYC)で行われた。

 この日は、ブロードウェイ版や全米ツアー版の出演者らが再集結。約100分にわたる一夜限りの無料コンサートとして上演され、会場に入れない観客のためのライブ中継も、劇場の外で行われた。


約7000人を受け入れたガンダー、25年後も続く交流

 同作は2001年9月11日、米国領空の閉鎖により、カナダ・ニューファンドランド島の小さな町ガンダーに足止めされた約7000人の乗客と、彼らを受け入れた地元住民の実話をもとにしたミュージカル。38機の旅客機を受け入れ、住民たちは食事や寝る場所を提供し、国籍や宗教を超えて見知らぬ人々を支えた。

 あれから25年、ガンダーと『Come From Away』の関係はさらに深まっている。作品の舞台となったガンダーでは2023年から地元プロダクションが上演され、世界各地から観客が訪れている。25周年の今年は4年目の公演が6月28日から9月13日まで行われ、9.11当日には地元住民や当時ガンダーに足止めされた乗客らを招いた特別公演も開催された。ガンダーでの公演は、実話を伝える作品が、その物語が生まれた町へ「里帰り」する機会となっている。

 『Come From Away』は2017年から2022年までブロードウェイで上演された後も、世界各地で作品が受け継がれている。現在も北米を中心にツアーや地方劇場で上演され、25周年を迎えた今年9月には世界で146ものプロダクションが上演されている。米国の地方劇場でも人気が高く、学生による公演も広がっている。

 日本でも2024年に日本初演となる日本版が上演され、東京をはじめ全国各地を巡演。9.11を直接知らない世代を含め、ガンダーで起きた実話は国境を越えて語り継がれている。


悲劇の地で25年後に伝える「希望」

 今回の公演は、上演された「場所」にも大きな意味があった。PAC NYCはWTC再建計画の文化施設として2023年に開館。9/11 Memorialに隣接し、かつて同時多発テロの現場となった場所に建つ。

 9.11の惨劇そのものではなく、その直後に生まれた人々の善意と助け合いに光を当てる『Come From Away』。25年を経てもガンダーでは実際の住民や当時の乗客とのつながりが続き、その物語は世界各地の舞台へと広がっている。

 世界を震撼させた悲劇の地が、人々が集い、芸術を通して希望や記憶を共有する場所となった。そのWTC跡地で、ガンダーから始まった「見知らぬ人を助ける」という物語が25年後に上演されたこと自体が、節目の年を象徴する公演となった。

Text : Akiko Kudo  Editor-in-Chief, NY Biz. New York–based Broadway and performing arts writer with 30+ years of experience. NY Biz編集長。ニューヨーク在住。30年以上にわたり現地からニューヨーク情報を発信。幅広い分野をカバーしつつ、特にブロードウェイを中心とした舞台・パフォーミングアーツに精通。ttps://nybiz.nyc/broadway/

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