国際ジャーナリストとして第一線で活躍する内田忠男氏の講演会が8月29日、ニューヨーク日系人会館で開催された「明治維新150年、日本と世界は?」をテーマに日本の現状や世界情勢を読み解いた。
内田氏の講演は笑いを誘うような軽快な口調から始まり、明治維新から、自身の体験談を交えた第二次世界大戦の敗戦、そして現代の政治についてなどの話をさまざまなな切り口から展開した。
内田氏は近現代の日本には、明治維新と敗戦の二つの大きな改革があったと語り、現代の若者に維新を成し遂げた幕末の志士のような「慣習に囚われない若い力、身を捨てた勇気、野心や情熱、自分だけの栄達や蓄財ではない公共の精神」が備わっているだろうかと懸念した。
現代の市場経済において、競争によって、富の格差が生じ、冷戦後のグローバル化が、“敗者”の怒りによって崩されてきている。ここ3年間で英、米、仏、独、オーストリア、オランダの政治情勢が大きく変化してきているのは、全て政治経済のサイクルから取り残されている“民衆”の怒りが引き起こしたものであると、内田氏は説き、「その格差は今も拡大し続けている」と述べた。
現代の政治においてポピュリズム(大衆迎合主義)であることは大切なことではあるが、それが衆愚政治に向いてきているのではないか、と内田氏は警鐘を鳴らした。次代を担う若者に覇気がない日本の将来を危惧し、衆愚政治に傾きつつある米国の将来に恐れを抱いていると語り、講演を終えた。
質疑応答では「これからの日本には名前を残せるリーダーが出てくるか」との声が上がり、内田氏は「今の日本には民主主義、至上主義を凌駕するような政治と経済の原理が必要である」と述べ「若者にはこうした原理を打ち出してほしいが、覇気はまるで感じられない」と嘆いた。
今の日本に必要なものは日本人同士で本音の議論を交わすことと締めくくると、会場は拍手に包まれた。
(2018年9月8日号掲載)