「いま日本で何が起きているのか」
「捨てる実践」を心掛けたい
ニューヨーク倫理友の会は10日、名門プライベートクラブとして100年の歴史をもつニューヨーク・アスレチッククラブで第13回年次総会を開催した。
同会理事長のリンゼイ芥川笑子氏のあいさつに始まり、ニューヨーク日本総領事館の岩井文男首席領事が祝辞を述べた。水野五十一シェフプロデュースによるフルコースが振る舞われる中、参加者は古楽器の箜篌(くご)を演奏するハープ奏者の菅原朋子さんによる、平安時代の調べや「荒城の月」「まちぼうけ」などの演奏を楽しんだ。
そして、メーンイベントである一般社団法人・倫理研究所理事長の丸山敏秋氏による講演がスタート。今年のテーマは「いま日本で何が起きているのか」。
今年60年ぶりに伊勢神宮と出雲大社の遷宮が重なり、空前の“遷宮”ブームとなった日本。伝統的な日本の精神文化の世界で長い歴史を持つ2つの遷宮が重なったことで、昨年から日本の政治、経済、生活にも大きな変動があったと話す丸山氏。
その中で、「現代の日本は、低成長、少子高齢化を伴う人口減少、地方の過疎化、巨額の財政赤字など、成熟社会の宿命をたどっている」と唱え、1998年からは14年連続で年間3万人超の自殺者が出ている現状や、ベンチャー精神の後退、ひきこもりやニートが増加していると紹介。
諸刃の剣(もろはのつるぎ)である現代日本のニヒリズム(虚無主義)が、人々の絶望の淵に追い込むか、それとも新たな展開・飛躍の契機となるかを問いた。
最後に、遷宮にあやかり、ニヒリズムに負けない強靭(きょうじん)さを保持するために、祖父、丸山敏雄氏(故人)が提唱した「捨てる実践」を心掛けたいと説いた。
参加者にとって、現代日本を理解すると共に、人間のあり方について考えさせられる機会となった。
(写真はいずれも12日、ニューヨーク・アスレチッククラブ=撮影:鈴木貴浩)
(2013年11月23日号掲載)