NY倫理友の会「春のランチョン」、ゲストスピーカーにNY歴史問題研究会会長・高崎康裕氏

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日本人の心の形、言葉遣いに対する意識への回復を訴え

会場では多くの参加者が熱心に耳を傾けた=17日、ニューヨーク(撮影:工藤)

会場では多くの参加者が熱心に耳を傾けた=17日、ニューヨーク(撮影:工藤)

ニューヨーク倫理友の会(理事長・リンゼイ芥川笑子氏)は17日、毎年恒例の「春のランチョン」をマンハッタンの新橋レストランで開催した。

講演をする高崎康裕氏=17日、ニューヨーク(撮影:工藤)

講演をする高崎康裕氏=17日、ニューヨーク(撮影:工藤)

今回ゲストスピーカーに迎えたのは、ニューヨーク歴史問題研究会会長の高崎康裕氏。高崎氏はYTレゾリューションサービス社長として、事業開発コンサルティングや各種施設の開発企画・設計などを手掛けているが、周囲の要望を受け、歴史を学び日本の礎を考察する研究会を2011年から開催している。ランチョンでは、同研究会につながる内容として「~日本人とその美意識~『もののあはれ』と『漢意(からごころ)』」をテーマに、古代から戦後、現代の日本人が持つ言葉への意識と背景を示しながら、その美・倫理意識とは何かを語った。

高崎氏はまず、江戸時代の国学者・本居宣長の和歌を取り上げ、桜が古代日本人の感性そのものであることを説明した。また「もののあはれ」とは、「感動する気持ちが、言葉にならず発せられる嘆息の辞である」という本居宣長の解釈を紹介し、桜に託して和歌を詠む人の知性や心を、蒲生氏郷(がもう・うじさと)や細川ガラシャ、浅野内匠頭、良寛、西行法師の和歌を例に挙げて解説した。
続いて、平仮名のもととなる「万葉仮名」が、巨大な漢文明に自国の文化が滅亡するという危機感から生まれたことを説明。万葉集を通じ、人々が和歌で心を表す素養を育くんだことを述べ、その感性を養ったのは、地震や火山噴火が多発する厳しい自然環境の中、自然を人よりも上位とし、他人や公のために生きる人生を美しいと捉えた価値観であると述べた。
そして、その感性や美意識は戦後の連合国軍総司令部(GHQ)の政策を経て失われつつあると高崎氏は警笛を鳴らす。現代の言葉遣いの乱れとともに、日本人の源流である感性や人としての矜持(きょうじ)も失ったと嘆いた。
「漢意」とは、江戸時代までなら中国を、明治時代なら欧米を基準として、もはや日本ではない国となることを意味する。戦後の日本で言えば、安易な欧米志向が「漢意」にあたると説き「現代の“漢意”を克服し、日本人の心の形や所作、言葉遣いに対する意識を回復しようではないか」と訴えた。
最後には、法華経のたとえ話「衣裏宝珠」(えりほうじゅ)を現在の日本人の状況と見て、「汚れた衣の裏に隠れた微かなきらめきを手掛かりに、われわれの歴史が持つ宝珠を発掘していく。それが今、われわれに求められているのではないでしょうか」と結んだ。

会場の参加者は、高崎氏の講演にときにうなずきながら真剣に耳を傾けたほか、食事を楽しみつつお互いの親交を深めた。

ニューヨーク倫理友の会のリンゼイ芥川笑子理事長=17日、ニューヨーク(撮影:工藤)

ニューヨーク倫理友の会のリンゼイ芥川笑子理事長=17日、ニューヨーク(撮影:工藤)

(2018年5月26日号掲載)

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