NY倫理友の会「第19回年次総会」丸山敏秋氏講演「人生の羅針盤」

0

混沌の時代を乗りきる生き方「自分が変わる」「人事を尽くして天命を待つ」を紹介

 

ニューヨーク倫理友の会は11月7日、名門プライベートクラブのニューヨーク・アスレチック・クラブで第19回年次総会を開催した。

年次総会の模様

司会のニューヨーク倫理友の会理事長のリンゼイ芥川笑子氏

同会理事長のリンゼイ芥川笑子氏のあいさつに始まり、同氏のユーモアにあふれた司会進行で理事や来賓が紹介され、会は和やかな雰囲気で進んだ。

川村泰久国連日本政府代表部特命全権大使・カナダ大使

まずは、カナダ大使として19日に赴任する川村泰久大使が登壇した。計6年間のニューヨークでの思い出や今後の業務などを語った。

講演を行った一般社団法人倫理研究所理事長でニューヨーク倫理友の会総裁の丸山敏秋氏

次に一般社団法人倫理研究所理事長でニューヨーク倫理友の会総裁の丸山敏秋氏による講演が始まった。

講演のテーマは「人生の羅針盤」。丸山氏はまず、世界情勢が混沌としていることに触れ、「あまりにも多くのことがあまりにも急速に、そしてそれらが同時進行的に起きている」と強調した。元号が変わった日本は来年も変動があると予想されるとした。30年ごとに節目が変わる日本において、来年の2020年はプラスの方向に転じると予想されるが、上昇機運に乗れるか乗り切れるかが試されていると述べた。

日本だけでなく、世界の混迷の荒波を乗り切っていく個々人の生き方として二つ紹介した。一般社団法人倫理研究所という社会教育団体の創設者である故丸山敏雄(丸山氏の祖父)が発見した生活の法則「十七カ条」を紹介。その中で2点に焦点を当てた。

第1は「自分が変わるという実践」。これは多くの人が行わず、大抵の人は自分を変えずに他人を変えようとするという。大昔の聖人がこうした教えを説いているが広まっていないとした。ローマ時代の哲人皇帝、マルクス・アウレーリウス・アントニヌスの名言「良い人間についての議論はもういい加減にやめて、良い人間になったらどうか」も披露し、「まさに至言ではないか」と述べた。

第2として「人事を尽くして天命を待つ」を挙げ、古代ローマの哲人エピクテトスの言葉「世の中にはわれわれの力の及ぶものと、及ばないものとがある。及ぶものは、判断・努力・嫌悪など、ひと言でいえば、われわれの意志の所産の一切である」を紹介した。「結果は天の領分」だが、自分の力の及ぶことなのに十分やらない。自分の力の及ばないことを考えて心配したり、怒ったりする人が大多数だと丸山氏は語った。

元・メジャーリーガー松井秀喜氏のスランプを脱した際のコメントを紹介し「まるでエピクテトスではないか、だからあれだけの活躍ができた」と述べた。

最後に日本の国語教育で大きな功績を残した大村はまさんの話を紹介した。大村さんは著作『教えるということ』の中で、奥田正造さんという先輩から教わったこととして以下の話をつづっている。

荷物をいっぱいに積んだ車がぬかるみにはまってしまい、必死になって動かそうとしている男がいた。その男の頑張りを見ていた仏様は、指先で荷車に触れた。車はぬかるみから抜け出し、男はカラカラと引いていった。こういう、仏様の指の役割をするのが一流の教師なんだ
─このことは大村さんの長い教員生活で常に支えになっていたという。

この逸話から「頑張れば天と通じる力を人間は持っていると思う」と丸山氏は述べ、そういったことを羅針盤の一つとしながら、日本はパワーを持って世界に貢献できる時代が来るのではないかと期待していると締めくくると、会場は拍手で包まれた。

年次総会の模様

ゲストアーティストとして演奏を披露したヤグール。(左から)サシャ・マルコビ ッチさん、上坪可奈さん

講演が終わると、じゃんけん大会や歓談の時間を経て、ゲストアーティストであるアコースティックデュオユニット「Yagull(ヤグール)」(ピアノ:上坪可奈さん、ギター:夫のサシャ・マルコビッチさん)の演奏が始まった。オリジナル曲など5曲が披露され、優しく、時には力強い音色に参加者は聞き入った。4曲目でハード・ロックを代表する名曲、「スモーク・オン・ザ・ウオーター」が「ヤグールバージョン」で演奏されると、会場からは手拍子も始まり、大いに盛り上がった。

リンゼイ氏が来場者への謝意を述べ、心温まる会は締めくくられた。

水野五十一シェフ監修の特別メニューが提 供された

(写真はいずれも7日、ニューヨーク・アスレチック・クラブ=撮影:田部井)

(2019年11月16日号掲載)

Share.