〈コラム〉「そうえん」オーナー 山口 政昭「医食同源」

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マクロビオティック(6)

マクロビオティックの語源は、西洋医学の父と呼ばれる古代ギリシアのヒポクラテスの唱えた「マクロビオス」に由来しています。ヒポクラテスは「健康には食物が影響する」と述べていますが、ギリシャ語で「マクロ」は“大きい”を、「ビオス(バイオス)」は“生命”を意味します。そのマクロビオスを“健康で長生きする人”のことを表す言葉として用い、自然の調和と秩序のとれた生活をすることによって健康で平和な心を保つ生き方、―いわば宇宙の秩序に基づいた生活方法、具体的には環境と食物を十分に配慮した簡素でバランスのとれた食事をすることによって、健康で長生きする「人間の理想的な生活方法」を「マクロビオティック」と呼んだのです。
そのマクロビオティックを現代に蘇らせたのが桜沢如一(ジョージ・オーサワ)です。世界30カ国以上で7000回もの講演を行い、300冊以上の著書を著すなど、日本よりもむしろ外国でのほうが有名です。1893年(明治26年)京都生まれ。16歳で結核にかかり生死の境をさ迷っているときに出会ったのが陰陽理論に基づく、食事による健康法を説いた明治時代の陸軍薬剤監・石塚左玄の著書、―頭に閃くものを感じて、彼が説く食養法を実践、見事に結核を克服するのです。このしあわせを世界中の人々に教えたいと、1929年(昭和4年)単身フランスに渡り、「宇宙万物は陰陽よりなる」との無双原理へと発展させてゆくのです。戦争の影響でいったん帰国したものの、53年再び海外に行き、各地で講演と著述の旅をつづけるのです。62年にはフランスの代表的週刊誌『ノワール・エ・プラン』が5週にわたって「フランスを救う日本人」というタイトルで彼の業績と理論を紹介しました。パリの名誉市民にも選ばれています。(久司道夫氏の著作を参考にさせていただきました)
ジョージ・オーサワに直接会ったことはありませんが、奥様のリマさんには「そうえん」で、お会いしたことがあります。当時90歳くらいでしたが、大変上品な方で、100歳で亡くなられるまで東京のマクロビオティック料理教室で教えておられました。
ジョージ・オーサワでいちばんすごいと思うのは、戦争が終わってまもなくの47年、東京で「メゾン・イグノラムス」(我知らずの家)を開設して、多くの青年を教育して世界に送り出したことです。なんとロマンのある話ではありませんか。そのひとりが、東京大学法学部を卒業後、同大学院を修了して49年に渡米、現在もマクロビオティックの普及活動を行われている久司道夫氏です。
(次回は4月21日号掲載)

〈プロフィル〉山口 政昭(やまぐち まさあき) 長崎大学経済学部卒業。「そうえん」オーナー。作家。著書に「時の歩みに錘をつけて」「アメリカの空」など。1971年に渡米。バスボーイ、皿洗いなどをしながら世界80カ国を放浪。

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