“家族”という素晴らしい贈り物を提供
コウノトリのコトバ-生殖医療の現場から 第6回
New Hope Fertility Center Dr. John Zhang
卵子の提供は“家族を持ちたい”と願っていてもなかなかその夢をかなえられない多くのカップルを助ける行為だ。また、特に日本人の卵子は、現在世界で最も価値のあるものと信じられ、日本人カップルだけでなく、多くのアジア諸国、さらにはアジア系ヨーロッパ、欧米カップルにも提供されている。だが、日本人社会では「卵子提供」は、やましいことで周りには公表できない行為かのように思われている。
第1子妊娠の平均年齢は年々格段に高齢化しており、現在では30歳という報告がある。また、30代半ば以降に家族を持ち始めようとする女性にとっては、年齢に起因した不妊に直面することも少なくない。さらに40代になって家族を持つことへの夢を持ち始めたカップルにとって、提供卵子の使用は現在とても頻繁に行われる技術となった。また、その技術を利用したカップルもそれを隠すことなく公表するようになっている。
一方で卵子を提供する側はどうだろう? 提供卵子を利用して不妊治療を行うカップルが増加するとともに卵子提供者の数も急増している。提供者になる理由として、もちろん善意、奉仕という気持ちもある。ただ、それだけではないことも知られている。一番多い理由としては「学費」だ。米国の雑誌や新聞などで卵子提供者の募集広告を見たことあれば知っているであろう。その欄には「報奨金」も大きく掲載されている。これを見て、“自身の体を商品化”していると考える人が多いのではないかと私は思う。
ただ、その一方で、現在妊娠を希望しない場合、「自分の卵子は排卵されても受精されることはなく死んでしまい、月経を迎えてしまう。どうせ自分で使わないのだったら困っている人に寄付すれば、報奨金もらえて学費の補助となるのではないか」という考えもある。
卵子はほかの臓器とは違い、20代女性だと20万〜30万個卵巣に蓄えている。排卵する卵子は月に1個だが、毎月排卵まで至らず、消滅していく卵子は約1000個。この毎月1000個消滅してしまう卵子のほんのわずか、しかも、その時期自分で使用する予定がない(妊娠を希望しない)場合、それを妊娠を強く希望するカップルを助けるために使用したとしても、自分の体に残る卵子の残量は変わらない。
報奨金目的で卵子提供を希望することに対しては是非が問われるとは思うが、その報奨金の使用目的や、その前提には他者に“家族”という素晴らしい贈り物を提供していることを理解しているのであれば、私は卵子提供者になる資格はあると思う。皆さまはどのようにお考えになるだろうか?
(次回は2月第4週号掲載)
〈クリニック〉 New Hope Fertility Center 世界トップレベルのスペシャリストが集結、ライフステージに合った家族計画をサポートしている。不妊治療、体外受精を望むカップルだけでなく、将来のために卵子凍結を行いたいシングル、ドナー精子、卵子での挙児希望者、また、ドナーとして卵子提供者が利用できるクリニック。2004年の開院以来、多くの成功事例を持つ。米国内以外にロシア、メキシコ、中国にも分院を設立、運営している。
【ウェブ】www.newhopefertility.com/