日本クリニック「医療の時間」第25診
幼少期の運動不足は、肥満や貧弱な心肺機能の原因になります。それだけでなく、老年期に起こりやすい骨粗しょう症の大きな要因とも考えられています。
今年1月に出された米国スポーツ医学学会の発表によると、成長期の前と最初の時期は身体運動が骨の成長を促し、骨密度や骨の強度の向上を大いに助ける圧倒的に絶好のチャンスであり、そして重要なことに、この恩恵は大人になっても続くということです。基本的に多量のカルシウムを摂取しなくても、若い時に運動をしていると骨の構造は強くなります。
学会は幼少時(6〜10歳)と成長期始めの時期(少女10〜11歳、少年12〜13歳)の身体運動は骨粗しょう症の一番の“防御策”になると提言しています。
最適な骨の成長を促す運動は、走る、ジャンプなど衝撃を含む運動です。たとえばバスケットボール、バレーボール、サッカーなどです。一般的にこうした体重負荷がかかる運動は、体重負荷のかからない運動(サイクリング、スイミングなど)に比べて骨密度の強化により大きな効果があります。骨の成長の促進のためには子供たちは最低でも10〜20分の運動を週3日以上はしたほうが良いでしょう。そのために、カリキュラムに取り入れられるべきですが、残念なことに米国では運動のための定期的なカリキュラムがありません。
アイオワ州の「骨の発達の研究」によると、1998年から5歳以上の子供を対象に調査した結果、1日30〜40分の活発な身体運動を行っていた子供は、それをしなかった子供に比べて大幅な骨密度の増加が見られました。
残念なことに現代の子供たちは私たちが子供だった時に比べて、運動をする環境が減っています。運動不足はどの年齢に対しても骨に何のメリットも生みません。それだけでなく、子供時代の運動不足は大人になってから骨の強化のためにカルシウムやビタミンDの摂取、体重負荷運動といろいろ試みたとしても、骨粗しょう症の要因となりえるでしょう。
格言にもある通り「攻撃は最大の防御」。子供たちには将来健康に過ごせるように、しっかり運動をさせてあげましょう。(参照:米国スポーツ医学大学の研究報告) (次回は5月19日号掲載)
〈今回の執筆者〉ケン・ヴィターレ医師/Kenneth C. Vitale, MD
日本クリニック/15W 44th St. 10FL. NY,NY 10036
University Ortho of NY/23-18 31st St, #210, Astoria, NY 11105
スポーツ医学、理学医療科、リハビリテーション科。