日本クリニック「医療の時間」第39診
肥満は病気でしょうか？ またそれを病気としてしまうことで起こる影響とはなんでしょうか？ 先月（６月18日）米国医師会（ＡＭＡ）は、米国が肥満という複雑な問題に立ち向かう努力を促すために、肥満を病気と認定しました。現在、米国人口の成人で３分の１が、子供で５分の１が肥満です。
この決定の影響についてはいろいろな角度から見ることができます。良い面で言えば、今まで多くの医師が、肥満患者について遠回しに肥満であることを伝えたり、減量を促したりしていましたが、この決定後は医師ははっきりと患者に減量のための治療を施すことができます。一方で、この認定は肥満の症状を助長したり、肥満の人々に医療機関への受診を敬遠させ、結果的に医学的治療から遠ざけてしまう恐れもあります。それ以外にも、米国の肥満人口の圧倒的な増加に対して、この認定が、医療保険料を大幅に増加させるだろうと心配する意見もあります。
現在も医療機関専門家は肥満が病気として厳密に定義されるべきか、まだ論議を続けている状況です。しかし、もし病気であるなら、認定するためには肥満をどう計るべきでしょうか？ 体格指数（ＢＭＩ）やウエストサイズ、体脂肪計での測定などいろいろな方法があります。その他、よく研究で使われる方法としては、水中体重測定法、骨密度、ＣＡＴスキャンや機能的磁気共鳴画像装置（ＭＲＩ）などがあります。測定方法も模索していかなければいけません。
また、ＡＭＡは肥満を病気と認めるだけにとどまらず、「科学と公衆衛生の審議会」とともに個々の肥満を抑制する習慣が改善されるように公衆衛生プログラムにもっと力を入れるよう、推奨しています。
皆が知っているように、身体運動、肥満や体重の制御は健康にとって大変重要ですが、多くの人々が、肥満で起こる糖尿病や、心臓病や、高血圧などの健康問題について見てみぬふりをしている状況です。今後、肥満を病気として取り扱うことで一番影響を受けるのは私たちの子供たちでしょう。子供たちにはこれから肥満という病気への知識と共に成長し、願わくば健康的な体重維持への新たなステップを踏んでいってほしいものです。
子供の肥満は、２年前に大きな社会問題として取り上げられ、オバマ大米統領が毎年９月を子供の肥満防止月間としたほどです。ＡＭＡの認定で、若年層の意識の向上が期待されています。この肥満問題には一生にわたって人々が取り組んでいかなくてはならないでしょう。
（参考：ＡＭＡ、「科学と公衆衛生の審議会」報告から）
（次回は８月第４週号掲載）
〈今回の執筆者〉ケン・ヴィターレ医師／Kenneth C. Vitale, MD
日本クリニック／15W 44th St. 10FL. NY，NY 10036
スポーツ医学、理学医療科、リハビリテーション科。
