今週は「シンデル法律事務所」
新I―9フォームの導入
米移民局は2013年5月7日、米国の全ての会社に対し、新しいI―9フォームの使用を義務づけました。I―9とは、労働者を雇用する際に米国市民か否かにかかわらず、雇用主によって作成・保管されなければならない雇用資格確認フォームのことを言います。
さて、今回導入された新I―9フォームは全9ページにわたり、1●6ページがフォームに関するインストラクション、7●8ページが雇用主および採用される従業員が記入するフォーム、そして最後の9ページ目には身元確認(就労資格を含む)用として従業員が提示すべき書類のリスト(ListA●C)が記載されています。
ここで際立つのがそのインストラクションの長さで、当フォームついてより詳細な説明がされており、このフォームの複雑さと重要性を物語っています。また、雇用主の人事担当などI―9フォームを通して従業員管理を行う責任者の方は、オンライン上(www.uscis.gov/files/form/m-274.pdf)からハンドブックを入手できますので、そちらを参考されてもよいでしょう。更には、移民局の公式ウェブサイト(www.uscis.gov)にもI―9Centralと呼ばれる記入および管理方法について詳しく説明されたセクションがあります。移民法に則って正しくフォームを記入し管理する上でも、それら情報源を有効に利用されることをぜひお勧めします。
なお、今回の新I―9フォームは、今後新規に雇用する従業員に対して使用するもので、現従業員を含めこれまで採用してきた従業員については、既に古いバージョンのものに正しく記入・保管されている場合は、改めて書き直す必要はありません。
また雇用主は、従業員および雇用主が記入した7・8ページ目のみの保管が義務づけられます。もし従業員の身分証のコピーも保管されている場合、それらはフォームと一緒に保管しれなければなりません。雇用主は1986年11月6日以降に雇用した全ての現従業員のI―9フォームを適切に保管しなければならず、仮に従業員が退社した場合でも、雇用開始日から3年間、または退社後1年間のどちらか遠い日付まで保管し続ける義務があります。
また、雇用主がセクション―2を記入する際に確認する従業員の身分証ですが、コピーによる確認は認められません。雇用主側は身分証が本物か偽物かを確実に見分けることを求められていない一方、雇用する従業員に就労資格がないことを知りながら雇用することに対し、大きな罰則が科せられます。それを防ぐためにも原本による確認は特に心掛けるようにしてください。
最後に、I―9フォームが正しい手順で記入され、正しく保管されていないことが発覚すると、一つのフォームあたり110●1100ドルの民事上の罰金が科せられます。各会社ともこのI―9フォームの記入は確実に対処することを常に心掛けるようにしてください。
(次回は9月第2週号掲載)
(「WEEKLY Biz」2013年8月10日号掲載)
〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
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