〈コラム〉法律の専門家がお答えします

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今週は「シンデル法律事務所」

外国人実業家のH―1B申請について (その1)

米国では歴史上、外国人実業家が新規企業の開拓と成功に関し、非常に重要な役割を担ってきました。しかし、近年の米国移民法は、米国で起業しようと志す外国人事業者を快く受け入れておらず、2010年に公表された覚書が示す通り、厳しい移民法規制の対象となっています。米国移民法上、ビザステータスを申請する外国人就労者の中にはビザをスポンサーしている雇用主(会社)の所有者である場合も多くみられます。H―1Bカテゴリーの申請基準の中では特に、この経済的な現実に対しての米国移民法政策の矛盾が顕著にみられます。
外国人就労者がH―1Bステータスを取得するためには、雇用会社のスポンサーが必要です。近年、H―1Bを申請する外国人就労者がスポンサー会社の所有者でもある場合、H―1B申請が非常に難しくなってきました。
10年1月8日に米移民局のヌーフェルド氏が公表した覚書(ヌーフェルド・メモ)により、H―1Bを申請する外国人就労者がスポンサー会社の所有者でもある場合、H―1Bビザの申請基準が更に厳しくなりました。この覚書の中には、これまでのH―1B申請基準を厳格化した審査基準が説明されています。
この覚書の中で、米国移民局はH―1B就労者とビザスポンサーとなる雇用者との労使関係(employee-employer relationships)の審査基準について言及しています。その中で、H―1Bビザ認可のためには労使関係の立証の必要性、また雇用者がH―1B就労者の雇用に関する事柄の決定権を保有していることを立証する必要性があることを明言しています。
これらの立証が難しいケースがまさに実業家が会社を設立するシナリオです。覚書内で説明されている移民局の見解はきわめて厳しい指針であり、H―1B就労者がビザスポンサー会社の主要株主(所有者)でもあるケースでは、雇用者とH―1B就労者が同一と見なされ、そこに労使関係が成り立たないと解釈されることから、雇用者側が会社の所有者でもあるH―1B就労者の雇用に関する決定権を持っていると証明するのはきわめて難しいのが現状です。
経済が低迷する中、米国政府は外国人実業家の米国進出を妨げているとの批判を受け、その状況に対する解決法の一つを公表しました。11年8月に米国移民局が発表した質疑応答形式の覚書上でこの解決法について説明されていますが、外国人実業家がH―1Bを利用し続ける可能性に光が灯るような内容でした。この書面上で、移民局はH―1B申請者がスポンサー会社の主要株主である場合でも、なんらかの外部監査が存在し、H―1B申請者の雇用に関する裁断権を会社の所有者以外が有することを証明できれば、労使関係が存在することを認めるという姿勢を示しています。例えば、会社の所有者から独立した取締役会(社外取締役)などが設置されている場合、がその具体例として挙げられています。
(次回に続く)
(次回は11月第2週号掲載)

(「WEEKLY Biz」2013年10月12日号掲載)sindel_faceup〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
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