〈コラム〉法律の専門家がお答えします

0

senmonka

今週は「シンデル法律事務所」

外国人実業家のH―1B申請について (その2)

前回の記事では、2010年1月8日に米国移民局のヌーフェルド氏が公表した覚書により、H―1Bを申請する外国人就労者がスポンサー会社の所有者でもある場合、H―1Bビザの申請基準が更に厳しくなっていた一方で、11年8月に移民局が発表した質疑応答形式の覚書上でこの解決法について説明されて以降最近では、2010年1月8日以前のような状況に戻りつつある状況が一部見受けられるようになっている旨、紹介させて頂きました。アメリカ経済が低迷する中、政府は、この2010年の覚書きにより外国人実業家の米国進出を妨げているとの批判を受け続けていた結果とも言えます。
この覚書の一部分を左記に抜粋します。
“…スポンサー会社に会社の所有者から独立した取締役会(社外取締役)が設置されており、その社外取締役会が人材の採用、解雇、賃金の支払い、業務の監督についての決定権を保持している証明を提出することで、H―1B申請者は労使関係の存在を示すことが可能。”
また、移民局は、オンラインポータルEntrepreneur Pathways(www.uscis.gov/portal/site/uscis/eir)を設け、ポータル上でも労使関係をどう立証できるのか説明しています。上記の覚書内の説明を見ると、外国人実業家が継続してH―1Bビザを申請できるようサポートしていこうという移民局側の姿勢もみられます。
移民局は、H―1B申請上重要な労使関係の立証に関し、会社の所有者から独立した取締役会(社外取締役)が設置されていることを証明することのほかに、優先株主や投資家の存在等を明記することで、会社がH―1B就労者の雇用に関する決定権を保有している事実を立証できると説明しています。これらの証拠を提出することで、H―1B実業家の会社での権限と会社の実業家の雇用に関する決定権との境界線をクリアにすることができます。これらの移民局の見解を踏まえれば、現在でも外国人実業家のビザオプションとしてH―1Bビザ取得のオプションを考慮できるケースもあります。もちろん、このビザオプションでの申請に関しては、その他色々なハードルもありますが、11年に公表された覚書により、前年に発表されたヌーフェルド・メモが生んだH―1Bビザ申請に関する懸念材料の一部が緩和されたといえるでしょう。
一方で、雇用ベースの永住権申請に必要であるPERM(労働条件認定書)の申請に関しては、移民局ではなく米労働局が審査を行っています。労働局も永住権申請者がスポンサー会社を所有しているケースに対し非常に厳しい審査を行っており、このようなケースに該当する申請者については、労働条件認定書の取得が非常に難しい現状にあります。こうした点も踏まえると、外国人実業家に対し、仮に非移民ビザであるH―1Bビザを取得するオプションの道が開けたとしても、実業家が米国への永住を考えている場合には、自分自身が会社を所有している会社を通してのPERM申請以外での永住権の申請オプションを模索する必要があるといえるでしょう。(次回は12月第2週号掲載)

(「WEEKLY Biz」2013年11月9日号掲載) sindel_faceup〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
過去一覧

Share.