〈コラム〉法律の専門家がお答えします

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senmonka

今週は「シンデル法律事務所」

“関連”する非営利団体とは

 H―1Bは日本人の間でも馴染みのあるビザの種類の一つですが、今年も2011年4月1日の受付開始以来まだ申請は続いています(11年6月13日時点で通常枠1万5200件、修士号枠1万200件)。
 とりわけ08年度、09年度は多くの申請が押し寄せ、H―1Bをスポンサーする会社の中には、自身の会社が年間上限枠の対象外として申請ができないか、弊社でも多くの問い合わせを受けました。
 皆さんの中には既にご存知の方もいるでしょうが、H―1Bの延長申請や転職申請、および同時申請を除く新規申請に関して、以下の雇用においてはH―1B年間上限枠の対象外となります。
(1)高等教育機関またはそれと関連する非営利団体
(2)非営利研究団体
(3)政府の系研機関
 ただ、ここで出てくる「“関連”した非営利団体」という定義が一つの論点となっています。
 最近の移民局はこの“関連”という言葉の意味について、より制限的な立場を取っているのですが、過去においては、例えば研究所や病院等が大学と関連しているという単なる合意書が証拠として存在して入れば充分でした。しかし、ここ1年の移民局の傾向では、関連するとしている二つの機関が共同所有されていることを証拠として要求しており、それに基づいたRFE(追加情報や追加資料の要求)を多く発行しています。従って、多くの雇用主がこの“関連”という言葉の定義について、政府を相手に正当性を求める選択肢を取るより、年間上限数が早々に到達しない現状では、年間上限枠対象枠にてH―1B申請を行っているのが現状です。
 一方で移民局は11年3月16日、高等教育機関に関連した非営利団体のH―1B上限枠対象外に関する方針について検討をしている旨を発表しました。更に移民局は“過去の審査結果に対して状況の大きな変化がない、または明確な間違いによる認可ではない限りにおいて、06年6月6日を基点として、それ以降の審査結果において申請者が非営利団が高等教育機関と連携していると判断している場合、その判断は正しいものとしてH―1B年間上限枠の対象外とみなしています。ただ該当する会社による今後の新しい申請においても、引き続きその関連性を証拠と共に示す必要性があります。 
 今回の移民局による発表は好ましい傾向ではありますが、移民局はこれを暫定的な方針としています。移民局が以前のような制限的な立場に戻らないことを願うばかりです。
 (次回は8月13日号載)

(「WEEKLY Biz」2011年7月9日号載)
sindel_faceup〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
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