今週は「シンデル法律事務所」
E―2投資家ビザ取得を
前提としたB―1ビザの取得
皆さんの多くは馴染みがないかもしれませんが、B―1ビザは将来的に海外から米国に積極的な投資を行い、それを資金として米国でビジネス活動を行うための準備を目的として渡米する投資予定者(Prospective Investor)に対しても発行されます。
B―1ビザは、一般的には日本の企業の社員が米国で取引先と商談する場合や、販売、ボランティア、修理技術の提供、会議出席、講演活動、研究者としての活動、医学研修、そしてセミナーに出席する場合等に使用されます。これは一般的に実際の労働以外の活動をすることを意味し、米国を源泉とする給与またはその他の報酬の受領を伴わない商用が目的となっています。
例えば、あなたが最近米国で自分の会社を立ち上げたとしましょう。ただ、その会社にはまだ十分な出資はしておらず、実際のビジネス活動は開始していません。このようなケースにおいて条件が整えば、あなたはその会社での将来的なビジネス活動の準備としてB―1ビザを申請することができるのです。
B―1ビザは一旦認可されると通常10年有効なビザが発行され、米国への入国毎に最大で6カ月の滞在期間が与えられます。B―1投資予定ビザに関する興味深い点は、発行されるビザの注記に“Prospective Investor”と記載される場合があることです。この注釈があることで、B―1での入国の際に起こりうる問題を回避することができ、また将来的にE―2投資家ビザを申請する際に大変有効となります。
もちろん申請の際は、まだ十分な投資はなされていないとはいえ、その投資を通して生計を立て、且つビジネス活動を行うのに十分な財源を示すことは重要な審査条件となります。
尚、このE―2投資家ビザですが、仮にビザ取得者が日本人である場合、会社の最低50%が日本国籍を持つ個人または企業によって所有されている必要があり、当会社に対して米国での事業に十分に出資するか、または既に出資しており、重役または管理業務を行うための特殊技能を持っている方に適用されます。事業内容は製造業からレストランまで規模は問われません。ただ、その事業の為に相当額の投資(Substantial In-vestment)を行っていること、その投資を基に活動的に事業を行い、十分な収益が上がることが条件で、その投資が唯一の生活手段であっては十分な投資とは認められません。“相当額の投資”という言葉に対する具体的な定義はなく、企業の業務内容により異なります。一方で、投資が非活動的(Passive Investments)であってはE―2ビザの条件を満たしません。例えば、単なる居住用住宅や土地の購入、銀行への資金移動、証券への投資等は非活動的な投資と見なされてしまうでしょう。
このように将来の自分自身の米国でのビジネス活動を見据えた上でのB―1ビザ申請は、一つの有効な手段と言えるでしょう。
(次回は11月12日号載)
(「WEEKLY Biz」2011年10月8日号載)
〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
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