今週は「シンデル法律事務所」
L―1ビザの条件及び審査状況(その1)
皆さんの中にはこれまでL―1AやL―1Bビザを申請した、または会社の人事の方であれば、日本からの駐在員のLビザに関して担当したもののビザ取得に大変苦労した(必要書類、情報集めなど)、質問状を受けた、大変長い時間が掛かった、また中には最終的にビザが却下されたなどの経験をされた方もいるでしょう。 今、L―1ビザ申請を取り巻く状況はどうなっているのでしょうか。
現状を端的に言うと、Lビザの申請に対する審査は大変厳しいものとなっています。ではなぜ以前は認可されたものが今は追加情報請求を受けたり、時には却下されているのでしょうか。なぜ米移民局はすでに提出されているはずの書類や情報をあらためて追加請求するのでしょうか。移民局は、きちんと作成され整然とまとめられた申請書にちゃんと目を通してくれているのでしょうか?
こういった疑問に対する簡潔な回答はありません。ただ一つ言えることは、政府の移民に対する基本的姿勢が一律に否定的なものである、ということです。もちろん、虚偽のビザ申請を取り締まろうという政府の方針は理解できますが、明らかにまっとうな信憑性のある申請に対しても、移民局は提出された証拠をほぼ無視するかたちで同じものをもう一度提出するよう求めてくることも珍しくありません。移民局は企業がビザを申請する気を削ごうとしているのだ、と憶測する人もあるくらいです。実際、もし移民局がビザ申請に対してあまりに多くの追加質問をするようであれば、企業は外国人を雇用することをあきらめてしまうかもしれません。それではどのような点に注意すべきかいくつかテーマを絞って紹介します。
ビザ申請社員はL―1の資格条件を満たしているか?
これは単純なようで注意を要する質問です。どのように条件を満たすのか、きちんと説明し資料を揃える必要があります。最初に申請社員は申請直前の3年間のうち、最低1年間継続して海外の関連企業に雇用されていたという事実が必要です。通常この証明は、海外企業での給与明細の提出をもって行います。
また、アメリカ赴任前の職務内容も重要です。これは役員職・管理職・専門職のいずれかである必要があります。そして、それは肩書きだけでなく、例えば管理職ならその職務がどのような意味で管理職(職責の重さ、部下の数等)なのか。専門職ならその専門性について。こういったことの具体的な説明が必要です。
アメリカ企業での職務も役員職・管理職・専門職のどれかでなくてはなりません。海外での職務とアメリカでの職務が同じである必要はありませんが、社員の学歴や職歴がアメリカでの予定職務を遂行するに十分なものでなくてはなりません。
このような事項の説明はかなり詳細にわたる必要があります。しかし残念なことに、いくら手を尽くして説明をしても、移民局はさらなる説明を求めてくることがしばしばです。これは、近年のアメリカビザ申請の障害の一つとなっています。
(次回は6月9日号載)
(「WEEKLY Biz」2012年5月12日号載)
〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
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