〈コラム〉法律の専門家がお答えします

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今週は「シンデル法律事務所」

L―1ビザの条件および審査状況(その2)

 前回(5月12日号載)は、L―1ビザを申請する際に企業が注意すべき点について、ビザ申請社員のL―1の資格条件について紹介致しました。今回は企業側の条件について紹介したいと思います。

申請企業はL―1の資格条件を満たしているか?

 アメリカのビザ申請企業(赴任先)と申請社員が所属している海外の企業との間には、L―1ビザの申請条件を満たす一定の関係がなくてはなりません。
 この「関係」にはさまざまな形態がありますが、まずは次の4つのカテゴリのどれかに当てはまらなくてはなりません。親会社あるいは子会社(アメリカと海外の企業との間に50%以上の株式所有関係がある)、支社(企業としては同一でも、違う場所に存在するいわば事業所)、関連会社(直接の所有関係はないが、親会社を同じくする兄弟会社等)の4つです。
 この証明はほとんどの場合非常に簡単にすることができますが、それでも万全の準備を整える必要があります。証明に必要なものには、例えば株式所有関係を証明する株券や海外の企業の情報、株式元帳、資本金が海外の企業からアメリカ企業に送付されたことの証明等があります。しかし、時に親子関係の証明は難しいものとなることもあります。「子会社」と言っても常に親会社に100%所有されているとは限らないからです。
 さらに、申請社員がL―1ビザでアメリカに滞在中、企業がアメリカ国内と海外(最低1カ国)の両方で企業活動を続けるという証拠も準備してください。このためには、税金申告書、銀行口座明細書、親会社あるいは海外の企業の決算報告書等が必要となります。
 L―1ビザで気をつけなくてはならないのは、ビザのステータスを維持するためには最低1カ所、海外での事業基盤が必要であるということです。これはL―1ビザで働く社員がアメリカ赴任前に在籍した企業である必要はありません。一つでもL―1ビザ法規上の資格条件に該当する事業基盤がアメリカ国外に存在する限りは、仮にL―1社員のアメリカ赴任前の勤務先が売却されたり閉鎖されたりしても、その社員のL―1ビザには影響しません。しかし、アメリカ国外の事業基盤が全く失われてしまった場合は、L―1社員のビザステータスが失われることになり、別のビザへの変更をしなくてはならなくなります。
 このように、L―1ビザ申請は決して単純なものではないということがよく分かります。そのプロセスには多くの落とし穴があるのです。
 (次回は7月14日号載)
(「WEEKLY Biz」2012年6月9日号載)
sindel_faceup〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
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