〈コラム〉ストーリー性の大切さ 付加価値を上げ、顧客の心を掴む

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「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第5回

最近、レストラン業界への参入は増加の一途をたどっています。
消費者側から見れば、選択が広がり、どの店に行こうか迷ってしまうのですが、やはりせっかくお金を払うのだから、なるべく失敗はしたくありません。何かの記念日などは特に気を付けて、良い雰囲気の中で時間を過ごしたいと思います。それでは、そういう時はどういった場所を選択するでしょうか。高価な店なら間違いはないでしょうか。
先日、面白い話を聞きました。結婚記念日のディナーを予約するために、旦那さんがあるレストランに予約の電話したそうです。「実は、20年前にプロポーズした時にもそちらで食事をしたんです」と言うと、従業員は機転を利かせて「少し詳しく聞かせてください。その時と同じメニューにするのはどうですか?」と提案してきたそうです。当日、奥さんは大変喜ばれたらしいですが、その従業員は引退したシェフの家まで行き、メニューを調べたという裏の努力があったそうです。
このレストランは、もしかしたら高価な店でもなく、絶品の料理を出す店でもないかもしれません。ただ、この従業員のサービスを聞いて、そういう従業員が働くホスピタリティ高い店に一回行ってみたいと思いました。
この従業員のおかげで、旦那さんは“奥さんを大切にしている”ということを強調でき、奥さんも“旦那さんに大切にされている”という確信をいっそう持てたと思います。この従業員に商売につながるという計算がなかったとしても、この夫婦は何かあるたびに、この店にリピーターとして戻ってくるでしょう。全ての人が何かの満足を得る形となっています。
レストランの競争が激化する中、ストーリー性を大事にするということは大切です。そのストーリーによって付加価値が生まれ、消費者の満足度が高まり、結果的に店側の売り上げがつながげることにもなります。
ストーリー性といっても、従業員だけが作るものではありません。たとえば、すごく値段の高いレストランでも創業者の思いや職人たちの技と知恵などのストーリーを消費者が知ることにより、“絶品の料理を食べている”という満足感が得られます。
このようなストーリー性により付加価値を上げ、よりいっそう顧客の心を掴むことにより、競争相手との差が生まれてきます。それだけではなく、皆が満足することで良好な人間関係、雰囲気が生まれ、ビジネスも盛り上がっていくことでしょう。
(次回は7月14日号掲載)

(「WEEKLY Biz」2012年6月9日号掲載)
takeshi%20001[1]〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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