今週は「シンデル法律事務所」
L―1ビザの条件および審査状況(その3)
前回(6月9日号載)まで数回に分けてLビザの申請審査の現状、申請側の注意点について紹介してきました。ただ全てのLビザ申請ケースが同じではなく、既に成熟し、多くの駐在員が赴任しているアメリカ企業もあれば、最近アメリカに子会社を設立したばかりの新会社のケースもあることでしょう。ビジネス形態、従業員数、またビザ取得者の経験内容、またその経験年数等々、法律に則って様々に考慮すべき点が多くあります。それに応じて提出すべき書類も異なる場合もあります。
最近では、ネットワークソリューション、スマートフォンのアプリに関わるアメリカへの新規企業の参入も多く見かけます。Lビザはアメリカに新会社を作ることで日本の親会社から新規に駐在を派遣することが可能なのですが、例えば日米間の親子関係が1年未満の状況でアメリカの新会社に駐在員を派遣する場合は、通常3年のところ1年有効なビザしか認可されません。
このような背景の下、申請企業がアメリカ国内で事業活動を開始して1年に満たない場合は、さらに多くの説明や証拠提出が求められることになります。このような「ニューオフィス」のケースは、海外企業との関係等を証明するものだけでなく、単なるペーパーカンパニーではないこと?今後の事業続行可能性についての証明もしなくてはなりません。
アメリカの新規企業のビジネスプランやオフィスの賃貸契約書のコピー、オフィスの写真、すでにアメリカ国内でのビジネスに関する契約がある場合はその契約書、さらにはアメリカの会社の財政能力の立証など、アメリカでの事業続行の可能性を示す書類をできる限り用意する事がとても大事です。
企業の組織内変更
現代の経済社会環境を見ると、企業組織の変更(例えば吸収・合併等)が急激に行われることが珍しくありません。そして、それは社員のビザに影響を与えることもよくあります。企業の組織内変更によってL―1ビザ申請の時に承認されたアメリカ企業と海外企業の間の関係に変化が起きた場合、また組織内変更の結果L―1社員の職務内容に変化が起きた場合は、ビザの修正申請をする必要が出てきます。
また、ブランケットL―1ビザを持つ企業グループは、ブランケット申請の企業リストに新たな企業を加えた場合あるいはリストから企業を除く場合、修正申請をしなくてはなりません。ブランケットL―1ビザで勤務する社員は、ブランケット企業リストに記載された企業間の転勤を移民局への修正申請なしに行うことができます。もし新たな企業がそのブランケットのグループ企業リストに加わった場合(そのためにはL―1企業としての条件を満たしている必要がありますが)、新たにリストに加わった企業の社員は、そこでの勤務がL―1ビザの条件(直近の3年間のうち最低1年間の継続した勤務)を満たしているなら、直ちにブランケットL―1ビザでのアメリカ赴任が可能となります。(次回は8月11日号載)
(「WEEKLY Biz」2012年7月14日号載)
〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
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