〈コラム〉法律の専門家がお答えします

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今週は「シンデル法律事務所」

移民局による最近のビザ申請審査の厳しい現状(その2)

 前回に引き続き、今回は米国の政策調査機関であるthe National Foundation for American Policy(NFAP)が最近発表した、米移民局によるビザの審査状況に関する調査結果を詳細に紹介したいと思います。
 まず、移民局に提出されたL―1B申請のうち、その却下の割合は2007年度が全体の7%、08年度が22%でした。もちろん、その間L―1Bビザに関する法律に変更はありません。更に09年度が26%、10年度が22%と減少傾向になったものの、11年度は27%に引き上がり、ここ最近の却下の割合が高止まりしていることがはっきりと窺えます。なお、L―1Bビザは企業内転勤者ビザとして米国にて専門職に就く社員が対象のビザとなります。
 またH―1Bビザ申請の却下率については07年度の11%から09年度には29%に引き上がり、その後、10年度が21%、11年度が17%と減少傾向にはあるものの、引き続き以前に比べれば高い却下率となっております。とりわけ、近年については、申請側がより注意深く申請書類を作成している中でのこの却下率の高さであることを認識すべきです。なお、この結果は新規および延長申請など全ての申請ケースを対象としております。
 またL―1Aビザ申請の却下率についてですが、こちらは07年度の8%に対し、11年度には14%に引き上がっています。L―1Aビザは企業内転勤者ビザとして、米国にてマネジャーや管理職に就く社員が対象のビザとなります。
 更に、O?1A申請に対する却下率も増加しています。O?1Aとは科学、教育、ビジネス、スポーツなどの分野で卓越した能力の持ち主が取得対象となるビザで、その却下率は08年度の4%を始めとして、09年度が10%、10年が微増の11%、そして11年がやや減り8%となっております。
 次にL―1Bビザに関し、質問状が届く割合を見てみましょう。年間あたりの全申請に対し、07年度が17%において質問状が届いたのに対し、08年度には約3倍の49%にまで引き上がりました。更に11年度にいたっては前回(8月11日号載)触れた通り63%という大変高い割合となっております。一方、04年度の質問状の発行割合は実にわずか2%でした。つまりこの7年もの間に質問状の発行割合が2%から63%に跳ね上がるという異常事態となっており、当初はほぼ質問状無しで認可を受けていたL―1Bが今では全体の2/3のケースが質問状を受けているのです。
(次回は10月13日号載)
(「WEEKLY Biz」2012年9月8日号載)
sindel_faceup〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
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