パフォーマンスを最大化するために、やるべきこと、できること

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〝トランジション〟(5)トランジション・マネジメント

「対話で変える!」第25回

こんにちは。COACH A竹内です。駐在員の皆さんは、赴任される前にどんな準備をしてきましたか? 一日だけの、いわゆる異文化研修を受けてきた、とよく耳にします。また、赴任されてからは何を学び、どう考えや振舞いを変えていますか?駐在員のみならず、新しい役割や役職に就いたリーダーが、その与えられたポジションや環境においてパフォーマンスを最大化するために、やるべきこと、できることがあるとすれば、他にどんなことがあるでしょうか。

今回は、ある日系メーカー駐在員Aさんの事例をご紹介します。自己管理をしながら赴任地に適応し、駐在期間中の目標・目的を明確にする“トランジション・マネジメント”について考えてみましょう。
赴任して間もない駐在員の方々から、「前任者との引き継ぎや顧客への挨拶まわりをしていたら、あっという間にひと月経ってしまった…」という声を聞きます。

そこでAさんに、「駐在して最初の1カ月でやろうと思っていたができなかったことは?」と尋ねてみました。すると、「駐在期間中に成し遂げたいゴール、そのための戦略、そして、具体的な実行プランを策定するつもりだった」とのことでした。
「このままでは、またズルズルと時間が過ぎて…気づいたら日本への帰国辞令が、なぁんてことになりかねない」

筆者も14年ほど前に駐在員としてテキサス州ダラスに赴任しましたが、引き継ぎもさることながら、異国・異文化での生活基盤の整備、言語・習慣の違いに慣れるのに精一杯でした。ゆえに、目の前のことをこなすだけで毎日があっという間に過ぎていってしまったことを覚えています。

Aさんは、今から少しでもキャッチアップするために、コーチである筆者と以下のテーマを話しました。

「まずは、駐在員としての自分の役割やゴールをよく考えてみたい。そのために、課題やチャレンジを列挙し、自らの強みと弱みを分析した上で、それらを乗り越えていくための戦略を熟慮する。そして、向こう3カ月、1年間の実行プランを立てたい」

「次に、それに沿った形で行動しながら現地になじみ、周りの人たちにフィードバックをもらいながら自分の役割を見直してみる」

「最終的には、ゴールに向けて着実に進めるように、自己管理しつつ役割を全うするのが理想形」

これら一連のプロセスこそ、“トランジション・マネジメント”です。それを効果的に実施するために、コーチはクライアントとの対話を通じて支援していきます。周囲の状況をアセスメントやインタビューによって正しく理解し、次の行動を考え実行する。その結果をフィードバックに基づき把握し、軌道修正をしながらゴールに向け着実に進んでいくサイクルを回していきます。

駐在期間はあっという間に過ぎていってしまいます。だからこそ、この“トランジション・マネジメント”の重要性が注目されているのです。

「COACH A」竹内 健【執筆者】
竹内 健(たけうち・たけし) エグゼクティブ・コーチ(COACH A USA 取締役 CFO)
PricewaterhouseCoopers LLPにて異例の日米5都市を異動しつつ、公認会計士として日米欧の企業や経営者へのサポートを行う中で、ソリューションの提供だけでなく対話を通じた人への投資があってはじめてクライアントのパフォーマンスが発揮されることを痛感し、これまた異例の会計士からの転身をはかり現職

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