〝トランジション〟(8)異文化対応力
「対話で変える!」第28回
私どもは、グローバルリーダーの成功を予測するための指標として、
(1)組織運営力、(2)関係構築能力、(3)現地化推進力、(4)異文化対応力、(5)家族対応力、の5つの能力を挙げ、その能力を高めていただくことを目指しています。
先日、「グローバルリーダーが身に着けるべき能力」をテーマとした上場企業トップの方の講演を聴講する機会がありました。講演では、特に前述(4)異文化対応力についてのエピソードが印象的でした。
「物事を深く掘り下げて、現地の同僚や部下と共に国や文化を超えた“共通の価値”を見つけ出すことができる人は、グローバルリーダーの資質を持っている」
「その一番の近道は、一人で徹底的に考え抜くだけでなく、周囲と互いにアイディアを出し合い、検証していくこと。つまり、“信頼関係”を築き、“あなたと話がしたい”と思われること」というものでした。
異文化対応力とは、一般的に、「郷に入れば郷に従え」的な考えや行動と理解されていることも多いようです。それも間違いではないですが、「相手に合わせる」だけでは、イノベーティブで斬新な商品やサービス、アイディアは生まれにくいでしょう。
では、異文化対応力を高めるためにすぐにできることは何でしょうか。
私はダラスに赴任した最初の数ヶ月、同僚のアメリカ人たちに“質問”ばかりしていました。彼らが何をどう考え、行動するのかを知る必要があったからです。
しばらく経つと、彼らと自分の違いがはっきり分かってきました。それと同時に、「ここは同じだな」という共通点も発見するようになっていきました。「共通点」が増えれば増えるほど、互いの行動の意図や最終的に目指しているものへの理解、そして「お互いを信頼する気持ち」が深まり、アイディアの創出、実践、検証の質も高まっていきました。
私のクライアントには、現地の文化や慣習の理解とともに、自国(日本)文化の紹介にも力を入れている方がいます。異文化対応力とは、互いが互いを知り、「国や文化を超えた“共通の価値”」をみつけるプロセスとも言えるのかもしれません。
【執筆者】
竹内 健(たけうち・たけし) エグゼクティブ・コーチ(COACH A USA 取締役 CFO)
PricewaterhouseCoopers LLPにて異例の日米5都市を異動しつつ、公認会計士として日米欧の企業や経営者を20年近くサポート。その経験を通じ、ソリューションの提供だけでなく対話を通じた人や組織への投資があってはじめてクライアントのパフォーマンスが継続的に発揮されることを痛感。これまた異例の会計士からの転身をはかり現職。