今週は「シンデル法律事務所」
最近の気になる移民法関連ニュース(その2)
前回に引き続き、移民法に関わる会社による不当な雇用管理に対する政府の対応について紹介します。
フォーエバー21社とSOSエンプロイメントグループも、移民法に反する不正労働を規制する特別顧問(OSC)より罰金を科せられました。フォーエバー21社は、会社側が従業員を雇う際に行うべきI―9プロセス中に、労働許可証を提示した従業員に対し、永住権の提出を要求したのです。その時点ではまだ永住権の申請中であった従業員は、合法な労働許可証を保持していたにも関わらず、フォーエバー21社に雇用を却下されたのです。
ちなみに皆様の中にはI―9とは何か知らない方もいらっしゃるかもしれませんが、I―9とは雇用主が労働者を雇用する際に米国市民かそうでないかに関わらず雇用主によって作成・保管されなければならない1枚の雇用資格確認フォームのことを言います。I―9の主な目的は1986年11月6日以降に雇われた全従業員の就労資格と身元確認です。雇用主は指定された確認書類リストを基に就労資格と身元確認を雇用の際、必ず行わなければなりません。移民改革規制法により、全ての雇用主に対して義務付けられ、違反があった場合には罰金や刑事罰があります。この記入されたI―9フォームは監査請求がない限り移民局や労働局に提出する必要はない一方で、雇用主には管理、規則に則った一定期間の保管義務があります。一見、シンプルなフォームにも見えるこのI―9ですが、その記入方法及び管理に関しては複雑な点が多く、インストラクション通りに実施しようとしても解釈が分かれることもあり、結局専門家に適切な管理について依頼することで、雇用主にとってはコストのかかるものでもあることは事実です。
一方、SOSエンプロイメントグループは、制限のないソーシャルセキュリティーカードと有効な運転免許証を提出した新規従業員を、I―9プロセス中、誤って雇用受け入れを却下してしまったのです。結果的に、フォーエバー21社は却下した従業員に対し、1705.50ドルの慰謝料を支払い、OSCに280ドルの制裁金を支払いました。SOSエンプロイメントグループも、従業員に9157.50ドルの慰謝料、そしてOSCに1200ドルの制裁金を支払いました。更に、フォーエバー21社とSOSエンプロイメントグループは、反差別対策のトレーニングを受けるようにも命じられました。
このように新規従業員を雇用する際に管理について、会社側とすれば些細な判断ミスとも思える事柄が、大きな代償として戻ってくる事になりますので、今一度会社側は、徹底した移民法の人事管理が強く求められています。
(次回は5月第2週号掲載)
〈今週の執筆者〉
弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law)
NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員
アメリカ移民法弁護士協会会員
1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。
〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800
Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com