首の痛み、ストレッチや肩甲骨の運動で改善するはずが…
〈コラム〉瓜阪美穂「理学療法士が教えます」 身体が痛い本当の理由 【第3回】
首の痛みで来院されているAさん。肩こりが元で首や肩が動かないため、理学療法の治療を受けに来ました。たいていの場合この症状は首のストレッチや肩甲骨の運動で改善します。しかしAさんの場合は詳しく診察していくと、アレルギーや胃もたれなどの炎症で胃の周りを覆っている筋膜が硬くなっていることに気が付きました。例えば、食べ過ぎると呼吸がしづらいと感じたことはありませんか? 胃は肺の真下にあるので胃が硬くなると肺が下に膨らまなくなり肩を上げるように上に動いてしまいます。そうすると首に近い一番上のあばら骨が上へ移動し、首を圧迫して首や肩周りに痛みを起こすのです。
この場合、胃の周りにある筋膜を治療することによって、肺の動きを正しく整えることができます。Aさんは理学療法の治療を受ける上で、食生活の見直しを必要とされました。
そして呼吸に関わる主要筋肉である横隔膜と首の筋肉の動きについて学んでもらい、実際に動きを感じながら呼吸をする治療も行います。内臓の状態が悪く、臓器が硬くなっていると、体を横に曲げたときに硬さやつまりを感じます。治療を通して、内臓、骨、筋肉、それを包む膜の柔軟性が呼吸時の体の動きに大きく影響していることを本人が実感するので、食生活改善への意識もより一層高まります。 (次回は6月第3週号掲載)
〈筆者プロフィル〉
瓜阪美穂(うりさか みほ) 理学療法博士、整形臨床スペシャリスト。ニューヨーク州立大学ビンガムトン校を卒業後、南カリフォルニア大学理学療法博士課程を修了。ブロードウェイミュージカルのダンサーの理学療法士としても活躍中。米国の理学療法により、自身の身体に興味をもち、正しい動作を生活に取り入れることを目的に治療や指導を行っている。
【ウェブ】https://omptny.com/ja/