すっごくおかしかった小学生時代
母がいつも大丈夫と言ってくれたことや、高校に入る時に頑張って奨学金を取ったことなどを書くと、私はきっと優等生だったと皆さん勘違いされるかもしれないですが、私の小学生時代はすっごくおかしかったのです。
私は本を読むのが好きで、読んでいる本に出てくる世界が自分にだぶって、自分も同じようにしてみたいって思っていました。小学校の低学年の時に読んだ本で、失われた世界っていう本があって、タイムスリップして恐竜時代に行ってしまうお話なのですが、あまりにも印象が強くて忘れられなかったです。そんな本で読んだ世界を想像しながら、映画のシーンみたいに映像を浮かべながら読んだりそれが自分に起こる想像をしていました。
いつも犬をお供にウロウロ歩き回って、うちの周りを探検したりもしていました。布切れをいくつも持って歩いて、それを来た道に縛り付けながら歩いて、「これで帰り道が分かるわ」なんてやっていました。ある時、虫をたくさん採って、それはうちの近くの小高くなっている場所の階段の上から一気に放ちました。するとふわーっと風に舞うように虫たちが飛んで本当にそれは美しくて、それを階段の上から座って眺めたりしていました。自分一人で冒険している気分になっていましたから、自分の世界に入って歩きながらまあまあ楽しんでいたのです。
サンダルのまま学校にいったりとか、終業式があったのを忘れて学校に行ったら休みで、駄菓子屋さんのおばさんにランドセルを預かってもらって遊んだり、とにかくうっかりでそそっかしいからよく見ないで違う種類の靴下を履いちゃったりとか、そんなこともたくさんありました。
雨の日に私だけお迎えがないから、雨の中をびしゃびしゃ歩いて帰っていたときも、歩きながらいろんな事を考えて帰ってきて、だからそれで良かったのです。母も別に「可愛そうに」とか「ごめんね」とか言わないですし、子供時代にあれこれ構われなかったのが、心配されなかったのが何より自分にとってありがたいことでした。
(次回は12月14日号掲載)
かわの・さおり 1982年に和包丁や食器などのキッチンウエアを取り扱う光琳を設立。2006年米国レストラン関連業界に貢献することを目的に五絆(ゴハン)財団を設立。07年3月国連でNation To Nation NetworkのLeadership Awardを受賞。米国に住む日本人を代表する事業家として活躍の場を広げている。