出生前診断36
~日本ではあまり知られていないサイトメガロウイルス(2)~
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第71回
前回=9月1日号掲載=から、羊水検査が実施される理由の六つの項目の中の一つであるサイトメガロウイルスについて説明しています。母親がサイトメガロウイルスの感染者である場合、赤ちゃんの健康に影響が生じる可能性があるこのウイルスのキャリア(ウイルス保持者)は成人の半数以上にも達しているにもかかわらず、日本ではあまり語られていません。サイトメガロウイルスに感染している多くのキャリアに明らかな症状が現れず全く問題なく健康な成人と同様に生活ができるため、表面化しないためです。しかし、このウイルスは赤ちゃんに感染すると深刻な問題が起きることがあります。
サイロメガウイルスに感染している妊娠中の母親から赤ちゃんへ感染してしまった場合を、先天的サイトメガロウイルス感染症と言いますが、母親が妊娠中にサイトメガロウイルスに感染した場合からも、妊娠以前から感染していたウイルスが妊娠中に目を覚まし感染に至る場合からもあり得ます。
米国では、約0.5%から1%の赤ちゃんが、妊娠中にサイトメガロウイルスに感染して誕生します。つまり100人から200人に一人で、決して少ない数ではありません。
誕生後も、感染している母親以外からでも、感染している兄弟姉妹や、保育園での感染の可能性もあります。感染している子供の唾液や尿に含まれているウイルス量は非常に高いためで、おむつの取り換え時など気を付ける必要があります。
サイトメガロウイルスに感染している赤ちゃんの誕生時の明らかなサインとしては、極端に頭が小さい(小頭症)、未熟児で出生、体重が軽い、黄疸(おうだん)が出てている、湿疹がひどい、肝臓・脾臓(ひぞう)の問題、肺炎の症状が出ている、癲癇(てんかん)を起こす、などが挙げられますが、このような状態が起こることは稀(まれ)で、ほとんどの赤ちゃんは誕生時には健康です。しかし、時間の経過とともに、次第に問題が見られ始めるケースがあります。数カ月内に症状が出てくる場合もあれば数年後の場合もあります。
(さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。