出生前診断37
~日本ではあまり知られていないサイトメガロウイルス(3)~
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第72回
成人の半数以上に罹患しているにもかかわらず、日本ではあまり語られていないサイトメガロウイルスについて説明を継続します。母親がサイトメガロウイルスの感染者である場合、赤ちゃんの健康に影響が生じる可能性があるため、知っておきたいウイルスです。
前回=10月6日号掲載、サイトメガロウイルスに感染している赤ちゃんの誕生時の明らかな症状を指摘したと同時に、誕生時には健康に見えても、時間の経過とともに、次第に問題が見られ始めるケースがあることもお伝えしました。先天的にサイトメガロウイルスに感染している赤ちゃんは、成長するにしたがって、健康にさらなる異常が発生する可能性があります。例えば、聴覚の障害、知的障害、視覚障害、癲癇(てんかん)、などです。特に聴覚の障害は年齢とともに悪化することが多いとされています。
誕生時に抗ウイルス剤を投与する早めの治療により、将来起こりえる聴覚や知的能力の障害の度合いを軽減することができる可能性があります。しかし、この抗ウイルス剤には副作用があるので投与には注意を要します。
サイロメガロウイルスの感染率は非常に高いにもかかわらず、症状が出ないことも多いため、ほとんどの日本の成人は検査をしたことがない状況にあります。
例えば、米国でドナー精子を購入する場合に、精子ドナーを使用した受精卵を移植する女性に対して当検査を行います。当該女性がサイロメガロウイルスが陰性である場合は、当ウイルス陽性のドナーは基本的に使用しないためです。米国の精子ドナーリストには必ずこのサイロメガロウイルスが陽性か陰性かは明記されており、ドナーを決定する大きな要因の一つになっています。
特に母親から妊娠中に子供にも感染する可能性があることから、妊娠するにあたり、日本でももう少し当ウイルスについて注意を払い、専門医から説明を受けるべきでしょう。
今回で、出生前診断に関するリポートを終結し、来月からは弊社のお問い合わせに多い代理出産について説明していきたいと思います。
(さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。