乳がんと戦う11
アルコールは発がん性物質という認識が広がる新時代に突入(続2)
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第142回
米国の女性間で最も多く診断されている乳がんについて、米国対がん協会(American cancer society)が、乳がんを含む多くのがん発生にはアルコール摂取と明確な関連性があることを2024年秋に発表し、今年、25年1月に米国公衆衛生局長官がアルコールの瓶ラベルに発がん性物質であるというラベル設置を求めたことが実際はこの概念の普及が滞っていることを前回=7月5日号掲載=、説明した。これは、以前、赤ワインは心臓に良いという研究の存在や、適度なアルコール摂取は、健康に良いという概念が普及しているためだが、英国ではこの概念が間違っているという大規模な調査研究の発表についても言及した。
米国ではメディア、ニュース、政府からも、アルコールはがん発生物質である、と発表されているが、実際には、社会では、この事実を知っているのは半数のみで、調査によると、18歳から25歳の女性のうち、アルコールが乳がんのリスクを高めることを認識している確率は3分の1未満に過ぎないと発表されている。今までの適度な摂取は健康に良い、また、たしなむ程度ならば影響がない、という誤った概念もいまだに普及している。
では、医療的な説明として、なぜアルコールとがんが関係しているのだろうか?
“がんとアルコールの関係”は、今だ、科学者たちが研究中であるが、現在、わかっている調査結果を基に以下の仮説が説明されている。
アルコールはDNAに損傷を与え、打撃を受けた細胞の増殖と腫瘍化の役割を持つこと、また、タンパク質や細胞にも損傷を与える可能性があること、そして、ホルモンレベル、主に、エストロゲン値を変化させるという可能性を持つと考えられている。
次のコラムでは、特に乳がんにおいてのアルコールと乳がんの関係を説明したい。
(次回=11月1日号掲載=に続く)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。