乳がんと戦う12
アルコールは発がん性物質という認識が広がる新時代に突入(続3)
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第143回
米国の女性間で最も多く診断されている乳がんについて、米国対がん協会(American cancer society)が、乳がんを含む多くのがん発生にはアルコール摂取と明確な関連性があることを2024年秋に発表したが、いまだ社会では半数しかこの事実を知らないこと、アルコール摂取を控えることが乳がんを避けることが出来る数少ない自己防衛の一つである認識が広がっていないことについて書いた。また、医学的に現在まで研究されているアルコールとがん発症の関係について前回=9月6日号掲載=、説明した。
では、アルコールと、特に乳がんに焦点を当てた場合、医学的にどのような関連性があって発症するのだろうか?
アルコールは、乳がん発症を促進するホルモンであるエストロゲンのレベルを高めるため、乳がんのリスク発症の確率を高めると考えられている。
アルコール摂取すればするほど、乳がんのリスクが上昇すると考えられている。研究によると、アルコールは、エストロゲンだけでなく、ホルモン受容体陽性乳がんに関連する他のホルモンのレベルも上昇させる可能性がある。
現時点で、研究者たちが、アルコールががんを発生させる作用については以下の通り。
(1)アルコール飲料中にあるエタノールが分解され、有毒な化学物質であるアセトアルデヒドとなり、発がん性がある可能性が高いとされ、DNAとタンパク質の両方に損傷を与えるのではないか?
(2)酸素を含む化学反応性の高い分子である活性酸素種が発現し、これが酸化し、DNA、タンパク質、脂肪を破壊するのではないか?
(3)一炭素代謝と葉酸吸収に対し、悪影響が起こりDNAの損傷につながるのではないか?
という可能性である。
次回は、現在行われている画期的な乳がんのワクチンの臨床試験が有望な結果を出している朗報についてお伝えしたい。
(次回=26年1月10日号掲載=に続く)

【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。