乳がんの罹患リスクがある人とは(4)

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乳がんと戦う6

閉経のためのホルモン治療も乳がん発生と関連性があるか?

「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第137回

現在、米国の女性間で最も多く診断されている乳がんだが、以前のように乳がんの診断は最終宣告ではなくなってきている。現在、米国対がん協会(American cancer society)が挙げている明確な2つの種類の罹患リスク、変えられないリスク要因変えることができるリスク要因のうち、変えることが出来るリスクをについて説明しており、今までに変えられるリスクとして、“肥満”と“アルコール摂取”が乳がんのリスクを上げることを説明した。

同協会では、これら以外に、リスク要因として運動不足を挙げている。体重とホルモンに関連するためだが、成人であれば週に150分から300分、つまり毎日に最低でも30分ほどの適度な運動が奨励されている。

避妊のためのピルの服用に関しても、服用しない女性と比較して、多少の乳がん罹患リスクが上がるという統計が出ている。これはエストロゲンとプロジェステロンとの合成が、がんを促進するためで、ピルを停止後、10年が経過することによるこのリスクは解消される。

閉経に関わるホルモン補充治療が乳がんの発生に関連があるか、は明確ではない。閉経に関わるホルモン補充治療とは、閉経に関わる症状(ホットフラッシュ、精神的に不安定になる症状など)を緩和、また骨粗鬆症を防ぐために、エストロゲン(ホルモン)単独で、また、エストロゲンとプロジェステロン(ホルモン)の混合を処方する。2つのホルモンを併せた処方においては乳がんのリスクが高まるという統計が出ているが、エストロゲンのみのホルモン補充治療に関しては、関連性は明確ではない。が、閉経に関わるホルモン補充治療を継続して行う理由がないと言われている現在、併合ホルモンの場合は骨粗鬆症や大腸がんのリスクを減らす反面、併合ホルモン治療もエストロゲン治療のみの場合も、脳卒中などのリスクが伴うため、利点とリスクのバランスを鑑み、担当医と相談しながら、個人の決断に委ねることになる。エストロゲン使用のみの場合、短期間、低量処方が推奨されている。

(次回=2025年1月11日号掲載=に続く)

【執筆者】清水直子しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。

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