乳がんの罹患リスク

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乳がんと戦う9

アルコールは発がん性物質という認識が広がる新時代に突入

「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第140回

米国の女性間で最も多く診断されている乳がんについて書いてきているが、現在、米国対がん協会(American cancer society)が挙げている明確な2つの種類の罹患リスク、変えられないリスク要因変えることができるリスク要因のうち、変えることが出来るリスクについて昨年、2024年に語った。当コラムの9月7日号掲載分で「米国対がん協会が、アルコール摂取は乳がんを含む多くのがん発生には明確な関連性があると説明した」と紹介したが、今年、25年に入って、特に1月、このアルコールについて、発がん性物質であると、米国のテレビ、新聞で毎日のように報道が開始された。これは、米国の公衆衛生局長官がアルコールの瓶ラベルに発がん性物質であるというラベル設置を求めているニュースが出たためだが、これは以前は、野球選手まで起用して広告を行うほど健康に害があることを示さずに称賛されたたばこと同じ運命である。

今では周知の事実になっている、たばこは発がん性物質であるという認識は、1950年代以前は世界には存在しなかった。50年代に入り、たばこと肺がんの関連性が指摘され始め、64年に初めて、米国公衆衛生局長官が警告を発表した。たばこの箱に、「発がん性がある」との表示の普及も2005年以降で、記憶に新しく、世界保健機関(WHO)のたばこ規制枠組条約(FCTC)の結果によるものであるが、業界は激しく反対していたことを思い出す。日本で言えば、今では民営である日本たばこ産業(1985年から)は、国営で日本専売公社として、たばこと塩を専売し日本国の収入源として機能していたほどである。世界、時代の変遷を示しているが、今では、たばこが発がん性があるというのは周知の事実で誰もが知っていることであるが、アルコールは発がん性物質であることは常識になっていない。ここで、大々的に、米国でアルコールが発がん性物質であると報道が開始されていることで、新しい時代に突入した。

この警報が大きく報道されたことを受けて、再度、アルコールについての現在の報告について説明したい。乳がんに関しては、アルコールが、エストロゲン濃度を上昇させる可能性があることから、少量でも乳がんリスク増加の一因と考えられる、と去年の文献で筆者は説明していた。

(次回=7月5日号掲載=に続く)

【執筆者】清水直子しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。

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