新しい血液検査は偽陽性や偽陰性の結果が出ることがある

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出生前診断26
~妊娠第1期:ファースト・トリメスター
簡易な検査で精密な結果が得られる時代に突入した(7)~

「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第61回

前回、染色体異常がスクリーニングできる新しい血液検査は、胎児のDNAを調べて結果を出しているものではなく“妊婦の血液からcell-free fetal DNA(細胞フリー胎児DNA)を調べているものであること、つまり、当スクリーニングが、妊婦の血液中に存在するごく僅かに循環する胎児のDNAの断片に対し、染色体異常があるかどうかを分析しているに過ぎない、ことをお伝えしました。これは、胎児のDNAを調べていることにはならないのか? では、何を検査しているのか、どのように判断すれば良いのか?を説明していきます。

母親のお腹にいる胎児(赤ちゃん)の成長は胎盤に依存しています。胎盤は母親の子宮内に形成されますが、へその緒を通じ、この胎盤から赤ちゃんへ、母親の血液を媒介とし酸素や栄養を運びます。また、胎盤は不必要な物質や赤ちゃんにとって不利な物質を濾過もしてくれます。つまり赤ちゃんの成長、生存のための糧となるものでお母さんとの橋でもあります。言うまでもなく、母親と赤ちゃんは繋がっており、生命共同体です。

妊娠中、胎盤にある細胞性栄養膜の細胞が母親の血液循環に流れ出し、細胞フリー胎児DNAに寄与することになります。このごく僅かの胎児のDNA断片が分析の対象となっているのです。

また、胎盤性モザイク(confined placental mosaicism:CPM)という現象も存在することも問題です。これは、胎盤のみに生じる細胞の混在(異常)であり、胎児には実際には染色体異常がない不一致が生じる現象です。この混在により、胎盤の細胞には染色体の異数性があるにもかかわらず、胎児には問題がない場合は偽陽性となりますし、この反対の状況の場合は、偽陰性となります。

つまり、当検査は、胎盤から流れる、母親の血流内のごく僅かの胎児のDNA断片が分析の対象、正しくは胎盤から流出するDNAと母親のDNAが混在している母親の血流から検査するものであり、直接胎児のDNAを調べているものではないことがわかります。そのため、正確な診断とは言えないのです。検査についての記述表記が、胎児のDNA検査ではなく胎盤のDNA検査である、とすれば当検査がスクリーニング検査に留まり、偽陽性や偽陰性の結果が出ることが予想できる検査であることを、生殖医療に係る専門家を含め、市場は簡単に理解できるはずです。この見解の誤差を招く記述は、命が関係している大事なことであるだけに、見直されるべきでしょう。

(さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子)

さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子【執筆者】清水直子しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。

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