妊活のとびら NY不妊治療ストリーズ 第19回
月経がある女性の10人に1人が発症すると言われる子宮内膜症。そして、子宮内膜症患者の30~50%が不妊に、また不妊で悩む人の25~50%に子宮内膜症が認められている。このように子宮内膜症と不妊は密接に関連しており、子宮内膜症は妊娠しにくい体質、つまり不妊のリスクを高める厄介な疾患なのである。
子宮内膜症とは
子宮内膜症とは、子宮の内側を覆う「子宮内膜」に似た組織が、卵巣や卵管、腹膜や臓器の表面、子宮の周囲などにできてしまう疾患。妊娠、出産適齢期である20~40代に多く見られるが、10代後半からも発症することもある。
子宮内膜症は通常の子宮内膜と同様に女性ホルモンの影響を受けて増殖するため、月経時に出血が起こる。だが、その出血を外に出すことができず、溜まった血液が周囲の組織との癒着を起こし、痛みを発症、そして不妊を引き起こす。
妊娠を阻む
子宮内膜症を発症すると、月経痛が段々とひどくなったり、過多月経や過長月経、排尿痛や性交痛などのサインが見られる。ただそれらは個人差があるため、通常の生活では自己判断が難しく、不妊を疑って不妊治療クリニックを訪れ、問診などの結果から子宮内膜症が発覚することが多い。
子宮内膜症を患うと、その部分に炎症や癒着が起こり、妊娠しにくい環境を生んでしまう。卵管障害や卵胞の発育障害などが起こって自然妊娠が困難となったり、排卵誘発や人工授精の効果を妨げることもある。また、子宮内膜症に罹患している女性はそうでない女性に比べて流産率が上昇。この疾患は炎症性であるため、着床不全を引き起こす可能性も高くなるのだ。
器官によって処置は異なる
現在当クリニックに通う患者様のAさんは、1人目出産後に卵巣に子宮内膜症を発症し、他院で手術を受けられた。しかし、半年後に再発。転院され、当クリニックの医師が診たところ、手術の際に卵巣に傷がついており、卵巣機能が著しく低下していた。子宮内膜症の手術は婦人科医でも可能だが、医師の技術と力量が妊娠という未来を左右するため、子宮内膜症専門医に頼った方がよい。その後、当医師は子宮内膜症に細心の注意を払いながらAさんの採卵に成功。今後は薬の投与によって子宮内膜症の症状を一時的に抑制し、冷凍胚移植に臨む。また、卵巣がんの可能性を摘み取るため、出産後に子宮内膜症の摘出手術を予定している。
もう1人の患者様Bさんは、日本で何度かIVFを試みるも流産を繰り返し、「子宮内膜炎が原因」との診断をもって当クリニックに来られた。しかし当医師の診断結果では、子宮内膜炎ではなく、子宮に子宮内膜症を発見。子宮に子宮内膜症があると着床、妊娠は難しく、また将来的な子宮がんの可能性も考慮し、摘出手術を行った後に冷凍胚移植を行う。その過程においてPGT─A(着床前染色体数異常数性検査)を試み、より確実に妊娠する道を選択された。
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子宮内膜症は多くの女性がなりえるにもかかわらず、見逃されがちな病でもある。経験豊かなドクターであれば、問診時の受け答えから子宮内膜症を疑い、超音波検査や卵管造影検査、通水検査など可能性のある場所を探ることができるが、早めの自身の気づきが功を奏することは言うまでもない。「激しい生理痛」や「性交痛」、そして「不妊」などこれらのキーワードが思い当たるなら、まずは不妊治療クリニックを訪れてほしい。
(次回は10月第2週号掲載)
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