代理出産35
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第107回
2020年にコロナ禍が勃発後、数少ない商業代理出産が合法である国の一つであるロシアで起きた代理出産から出生した赤ちゃんが代理出産依頼者である親不在で死亡した事件、そして、21年の春、ロシア議会に、外国人が代理出産を依頼することを禁止する草案が提出されたロシアの代理出産の状況をお伝えしてきています。医療コンサルタントである弊社にいただくお問い合わせ件数でトップ5に入る代理出産は、世界中で依頼が難しい状況になってきています。
ロシアの代理出産の変遷をお伝えしてきていますが、11年末に商業代理出産が認可され、12年1月には法的にも、連邦法にて代理出産が合法となったことは事実です。しかし、外国人がこの法律の内容を正確に知らずに、つまり、海外からの代理出産エージェントが誤って外国人を導き代理出産契約を行っている場合があることが分かっており、現在の、ロシア政府が代理出産を法的にも禁止しようとする取り締まりや代理母から出生した赤ちゃんが依頼者から取り上げられている状況を作っている原因であることを、ロシアの弁護士からの報告があることを前回=9月18日号掲載=、説明しました。つまり、当該法律では、独身男性は代理出産を依頼することは認められていないことを、特に外国人の依頼者は知らせていない、という報告になっています。これが、コロナ禍勃発以降のロシアでのロシア国民を含む独身男性からの赤ちゃんの取り上げにもつながっています。
21年の6月には、ロシア当局は、中国人依頼者である父親から15時間の尋問後、代理出産から出生した1歳になる赤ちゃんを取り上げ、当該中国人を人身売買の容疑で逮捕しました。赤ちゃんと中国人の父親は出国できずにロシアにとどまっていました。彼は独身ではなく、合法な婚姻下にある外国人依頼者です。当該中国人の弁護士であるミハイル・バクラノフ(Mikhail Baklanov)は、当ケースは法廷でも中国に帰国できるとされた合法ケースである、と指摘していますが、ロシアにおける外国人代理出産は、今後、禁止に向かっていることを示しています。
(次回は11月第1週号掲載)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。