代理出産41
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第113回
この3年半近く、40回に亘って、代理出産医療コンサルタントである弊社にいただくお問い合わせ件数でトップ5に入る代理出産とその歴史について説明してきました。前回=3月5日号掲載=までに、ロシアの代理出産がプーチン大統領の信念から乖離するため、代理出産は終了に向かっていること、そして、ロシアがウクライナへ攻撃侵入を開始してからちょうど1カ月が経過した今、商業代理出産が合法であるウクライナでの代理出産依頼も、まさに、この両国の戦いの状況に依存していることをお伝えしました。
現在、戦下であるウクライナの国境は閉まっており代理出産の依頼者は、赤ちゃんの誕生、また、迎えに行くための入国は不可能になっています。首都キエフから逃れた代理母、代理出産エージェントも多い中、この1カ月で代理出産でキエフで誕生した赤ちゃんらは、代理出産契約担当者らのアレンジメントにより、アパートビルの地下などでケアされています。弊社、モスクワ出身のアメリカ人情報アナリスト、ジェンヤ・イリーナ氏によると、プーチン大統領は、首都キエフを破壊する意向はない、とロシア語での情報がある、ということですが、キエフ郊外であるイルピン市(Irpin)が破壊され、イルピン市からそれほど離れていないキエフ市のショッピングセンターも爆撃を数日前に受けました。現在、キエフ市の80%は常態である、という報告は入っています。アパートビルの地下などでケアを継続している担当者は、攻撃が迫ってきたらいつでも逃げる覚悟、と話していますが、戦下でも依頼者のために自分の安全より赤ちゃんのケアを先行し、キエフに残っている勇敢な乳母、医師、看護師の無事を願います。
今後のウクライナにおける代理出産、生殖医療のありかたの行方は、今後のロシアとの力関係に依存している、と言え、今回の戦争を見守り判断していく必要があります。ロシアでは、ロシア本土で代理出産の閉鎖に向けて動いており、最終的な動きとして、2021年12月17日に再度、外国人依頼を禁止する法案が議会に提出されています。法案は、代理出産はロシア人夫婦、もしくは、医療的な問題により出産できないロシア人女性に限る、という内容です。ロシアのプーチン大統領は、外国人依頼による代理出産を禁止したい、ということは明らかであり、今後のウクライナでの代理出産依頼も、戦争という不安な環境であることと同時に、ロシアとの力関係によりどのように動くかが予測不能であるため、差し控えるべきと言えましょう。
(次回は5月第1週号掲載)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。