代理出産46
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第118回
代理出産医療コンサルタントである弊社にいただくお問い合わせ件数でトップ5に入る代理出産とその歴史についての3年半近くに亘って説明し、現時点での代理出産の最新状況までお伝えし、このシリーズも終了に近づいています。前回=8月6号掲載=から、当シリーズ中にいただいた、筆者へのお問い合わせで多かった質問と回答をご紹介してます。
〈お問い合わせに多い台湾の代理出産〉
(前回の続き)位置的に近い台湾での代理出産は現状はまだ合法ではないことを前回からお伝えしています。
日本でも、直接的に代理出産に関わる治療を日本産婦人科学会に属する医師がお手伝いすることが禁止されているだけではなく、代理出産を絶対的に必要とする子宮がない患者を代理出産“前提”に診察することも禁じられているため、注意が必要ですが、台湾でも、日本も同様の規則になっており、生殖医療に関する規則上において、代理出産に関わる医療は、医療関係者は携わってはいけないことになっています。台湾でも、不法な代理出産に関わる関与が議論を呼んでいます。
問題点としては、代理母への報酬、妊娠や出産に関するリスク、親権などが挙げられています。世界で、女性の権利を主張する多くのグループが反代理出産運動をしているように、台湾でも経済的に不利な立場にある女性が出産の〈機械〉として利用されることに対して反論を述べていますが、台湾の医療関係者内でも、各々の意見があり、代理出産でのみ赤ちゃんを授かることができる女性が少なくないため、選択肢としてあってもよいのではないか、という意見も少なくありません。
台湾の代理出産は、長年論議されてきており、動きは遅いのが実状で、合法化には遠く、実例は正式はないのが事実です。2020年5月1日に台湾で代理出産関連の人工生殖法の初読会がありました。このような動きがあることは少しずつ前には向かってきていることを示します。次回は、この初読会でどのような内容が論議されたか、つまり、将来的に、台湾で代理出産が可能になるとしたら、代理出産依頼のためにはどのような条件が必要になる可能性があるか、をご説明します。
(次回は10月第1週号掲載)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。