ワークスタイルについて(2)
「HR人事マネジメント Q&A」第8回
HRMパートナーズ社 副社長及びパートナー 上田 宗朗
前回=11月27日号掲載=では末尾にて、遠方に引っ越す従業員には、通勤時代のポジションのままであっても給与の減額などの施策を講じるか否か? 更に、会社所在地よりも田舎に移り住む従業員の給与を減額するならば、逆に会社所在地よりも物価高の都市部へ移り住む従業員が現れた場合は如何なる対応をとるのか?など考えることは山ほどあると結びました。
ではその遠方に移る従業員について有名大手企業はどのような対策を講じたでしょうか。先ず彼らは「長い通勤よりもリモートワークを選択する従業員は代償を払う可能性がある」と一貫した姿勢で臨んでいます。誰もが知るGoogleは、在宅勤務を続ける従業員に対し、住む場所に応じて給与を最大で25%削減する方針を打ち出しました。従来の勤務地と同じ都市に住み自宅勤務する場合は給与変更はしないが、オフィスから離れた生活コストの低い場所に住むほど削減額を多くすることにしたのです。また、FacebookやTwitterなども同じように自宅勤務を続ける従業員に対し減給する方針を明らかにしており、VMWareも遠方へ引っ越す従業員の給与を最大18%削減すると発表しています。
対するインターネット向け決済サービス企業のStripeは、引っ越し費用支援のため従業員に2万ドルを提供するとしたものの、後に支払い額を10%削減すると発表。実効性が怪しくなってくるのと同時に会社宣伝の一環ではないかとの穿った見方もできます。
それはともかく、現時点で減額の方針を打ち出している企業に言えることは、大半がサンフランシスコ近郊という全米中で最も高い賃金水準の地に在ること。言うなれば、その地より物価の高い地域存在しないからこそ、このような大胆な方針を打ち出すことができるとも言えます。
勿論、この流れに抗うように減給しないと発表するソーシャルメディアサイトRedditのような会社も出て来てはいます。
もしも皆さんの会社が3大都市圏にあり、従業員の引っ越し先がそれより物価の低い地であることが凡そわかっているならば減給に動くことも可能でしょう。
但し、それと同時に最大限に気を付けるべきことは、雇用関連法の一つであるThe Equal Pay Act(賃金同一法)に抵触しない或いは見做されないようにすることなのですが、それについては次回に持ち越します。
(次回は1月29日号掲載)
〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう 富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。