〈コラム〉遠方に引っ越す従業員が現れた場合に会社が考察すべきこと

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ワークスタイルについて(1)

「HR人事マネジメント Q&A」第7回
HRMパートナーズ社 副社長及びパートナー 上田 宗朗

今回以降は、前回=10月23日号掲載=で予告しておりましたように、見出しを「ワークスタイルについて」に移し、遠方に引っ越す(引っ越したい)従業員たちに対し、会社は如何なる措置を執らねばならないか? または執るべきであるか?を取り上げます。

先ず、従業員が遠方で就労することを会社が許可する場合ですが、一部がまたは全体がこれまでとは違った勤務体系となっていく以上は解決しておかねばならない懸案事項がいくつも生じます。一例を挙げますと、四半期毎あるいは半年毎の定例会議や年末の慰労会など基本的には全従業員を参加させる本社での全社的ミーティングのような大きなイベントに、そのような遠隔地勤務の従業員を今後どのように参加させるか?です。爆発的なパンデミックが今後再発しないとの前提で考えれば2通りに大別できますが、今では広く普及したオンライン方式での参加を認めるのか或いは移動費がかかろうとも本社まで来させて参加させるか、です。全国にセールスレップやサービスエンジニアが散り、以前からその者達に自宅就労させている会社ではこれまでにも大きなミーティングがある度に呼び寄せるケースが大半だった筈ですが、その者達でさえ顧客先への訪問を控え顧客担当者とのオンラインミーティングを増やしていっている現在、本社での全体会議の方も極力抑えた上でオンラインミーティングが主流になっていくのは条理と言えますが、但し、たとえそのような事情があろうとも会社が膝突き合わせての全体会議に拘るのは、巷に幾つものニュースとして伝わっているように、「会社内で面と向かって話し合うコミュニケーション手段がなくなれば、創造性や活気が失われ、会社全体の熱量が失せてしまい、延いては売り上げ減から利益率自体も減っていく」と多くの大手企業が痛感し懸念するからです。

会社負担で呼び寄せるのか、または自己負担で本社まで来て貰うのか…。部分的な自己負担であろうとそれを強いれば辞めてしまう事から言わずもがな会社負担を想定しなければなりませんが、その移動費分を必要経費と割り切るか否か? それでは割り切るにしろ、既に措置を打ち出している大手企業などのように、遠方に引っ越す(引っ越した)従業員には、同じポジションであっても給与の減額などの措置を取るのか取らないのか? では田舎に移り住んだ場合とは逆に本社のある地域より物価の高い都市部へ移り住んだ場合はどうするのか?など考えることは山ほどありますが、次回以降でもそれらについて一つずつ取り上げていく予定です。

(次回は12月第3週号掲載)

上田 宗朗

〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう 富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。

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