〈コラム〉ワーク・スケジュールについて(6)

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一時的措置だった自宅勤務がもたらした職住接近問題

「HR人事マネジメント Q&A」第6回
HRMパートナーズ社 副社長及びパートナー 上田 宗朗

前回=9月25日号掲載=では、「従業員を安易にエグゼンプト扱いすると罰則と損害が生じる」と題し、未払い賃金あるいは未払い残業代が発生しているのではないかと懸念されるならば将来に亘り長く企業を苦しめることになるため、解決は早ければ早い方が良い。と半ば警告めいた内容となりました。

これまで、このエグゼンプション・ミスクラシフィケーション問題を敢えて数回に及んでまで連綿と扱ってきた理由は、当シリーズの初回「ワーク・スケジュールについて(1)」以来、必ず絡めてきた「自宅勤務」という昨春以来のキーワード、これはパンデミックを機に何処の企業もがそうせざるを得なかったとの致し方ない事実がありましたが、オフィス勤務あるいは出勤している時には現れなかったミスクラシフィケーション問題が、当にこの自宅勤務に切り替わったことによってより一層露呈してきたからに他ならないからです。では今後はどうか?

その前に現状をおさらいしますと、この凡そ1年半の間、コロナ禍中の自宅勤務という就労形態が人々に与えた衝撃は凄まじく、生活観を、否、人生観までをも変えられてしまったが故に、自宅勤務を経験してきた労働者はたとえワクチンを接種しようとも治療薬が開発されようとも、以前の「出勤」あるいは「出社」するとの当たり前だった体制に戻りたくない、いや既に戻れなくなった者も多く、これら従業員を失いたくない雇用主たちは、出社を強要すれば会社を辞められてしまうことから、ワクチン接種が広まった後でさえ週にせいぜい3日または2日の出勤を従業員にお願いするに留まるところが大半でした。

唯、週にたった2日の出勤要請であってさえ、「リモートワークで職務を遂行できることがわかったのに、なぜ以前のように出社せねばならないのか?」と一部の自宅勤務の労働者は詰問してくることでしょう。つまり、会社は一時的措置として自宅勤務を認めただけなのに、それが大勢によって既成化されてしまったと言っても言い過ぎではない新たな世になったと言えます。

この事から何が新たに生じたか?

それは、会社近くに居を構え、これまでは通勤していた彼等に自宅勤務することが認められ、職住接近が不要になったことから、それに乗じて遠方に引っ越しを考えるか、既に引っ越しをしてしまったことです。

一般的な商人だったパリ生まれのゴーギャンが、画家に転向し、晩年に至っては、西洋的慣習から脱却するべく南の島タヒチに移り住み絵を描き、生涯を閉じた…。そこまではいかずとも皆さんの身近にいる従業員までもが、これまでの商習慣に縛られた暮らしを変えたい思いに駆られています。

次回では、これら遠方に引っ越す(引っ越したい)従業員たちに対し、会社は如何なる措置をとらねばならないかを取り上げます。

(次回は11月第4週号掲載)

上田 宗朗

〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう 富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。

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