人手不足(2)
「HR人事マネジメント Q&A」第14回
HRMパートナーズ社 社長 上田 宗朗
前回=5月28日号掲載=では、ここ最近は労働者が様々な理由で就労先を離れる事実から、多くの企業で起きている人手不足問題の現状を取り上げ、今号以降は労働者を如何に維持確保するかについて、企業の間で試みられているアイデアを紹介していく旨を予告しましたが、それらを取り上げる前に先ずは今起こっている事実、即ち、米国内の地域別人口の変遷についての実態に触れたいと思います。
本年3月24日付で米国国勢調査局(U.S. Census Bureau)が発表した推定によれば、2020年7月1日から21年6月30日までの米国内の各「郡(County)」の3分の2以上で、出生数よりも多くの死者数が記録され、そのような群は前年同期55.5%から73.1%に増加したとのこと。しかも21年11月17日付で米国内各社が一斉に報道していましたが、米国では薬物過剰摂取による死亡者数が初めて10万人を超えたとのこと。
この数値だけ見れば米国内各地において総じて「人口減」が起きていると誰もが考えがちですが事実はそうではなく、とりわけ特定の小さな郡では逆に人口増が顕著になっており、実に郡全体のうちの58.0%がこの動きに該当するようです。
これは多くの場合、国内における州間または郡間の移住が主な原因で且つ人口減を相殺するに十分な人口流入があったことを意味し、同局をして「最新のデータで、大都市圏からの人口流出が明らかになった」と斯く言うほど。同データが20年7月から21年6月の期間のものであることを考えればコロナ禍が作用したのは必至です。
では人口減が顕著である都市圏を同局が出す下記のランク表から数字だけ引用する形で見てみましょう。
このランク表からも大都市圏から近郊の小さな郡に人口が移動していることは一目瞭然ですが、同局は続けて、19年7月1日から20年6月30日までの南部地域への国内移住が米国内では最大の動きともいっています。
American Enterprise Instituteが出した20年4月から21年7月までのデータから人口流入の多いトップ10地域を州別順位で記しますと、1位がフロリダ州、2位がテキサス州、その後にアリゾナ州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、テネシー州、ジョージア州、アイダホ州、ユタ州、ネバダ州が続きます。
対する人口流出の多いトップ10地域は、1位がカリフォルニア州、2位がニューヨーク州、その後にイリノイ州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ルイジアナ州、メリーランド州、ハワイ州、ミネソタ州、ミシガン州が続きます。
幾つか補足しておきますと、ルイジアナ州は人気の南部地域であるにもかかわらず昔から仕事数が少なく、ここ2年ほどは近隣州のテキサス州やミシシッピ州に流れているようです。あと、人口流入のトップ10入りを果たしているアリゾナ州やネバダ州ですが、それら州でさえもフェニックスやラスベガスなど都市圏からの人口流出が見てとれます。このことからも総じて都市圏から近郊の郡に人口が移動していることがわかります。
(次回は7月23日号掲載)
〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう 富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。